ウェブマガジン カムイミンタラ

2001年01月号/第102号  [ずいそう]    

十二支の版画・巳年の版画
宝賀 寿子 (ほうが としこ ・ 版画家・北星余市高校美術講師)

24年前、巳年の正月に蛇の言葉遊びを木版画の冊子にして送ったのが私の本作りの始まりだ。ひょんなきっかけで1978年春、山菜採りと午の年賀本の2冊を合わせて『蕗採りの記』を出版。秋、勤めを辞め、『未・母さんと毛糸』を自費出版、申年には『猿紅奇譚(えてこうきたん)・赤と黒』はじめ、5年半の間に手刷り自家本10冊ほどと、『私のRail・way』出版、北海道新聞家庭欄にカットが載った。アマのうちにプロになり、版画の大変さを自覚したころ、美術講師の職を得た。丑年(うしどし)の取材で文と版画を制作し発表した個展で、鶴居村出身の酪農家の次男、松井と話がはずみ結婚、式をしないで二人展をした。2年前、夫の親類と展覧会をし、2001年11月に2回目を予定している。

私の版画はメッセージと連想遊びと配り癖、凝り性に起因している。版画に時を刻んでいる。年賀状は母と姉妹の家族分を制作し、手刷りした。遊びを入れた年賀版画は辞典類、図鑑類、関連図書、新聞雑誌などアンテナを張り、機会あるごとにメモやスケッチを貯めおいて構想する。個展でも発表したら説明が欲しいという方が多数出た。体力的、時間的に無理になり、家族分の手刷りは止めたが3種類連作、わが家の年賀状も手刷りは最小限にした。大きい版画を印刷葉書にしたのがきっかけとなり、茨城県で1996年、個展をした。版画は生活の一部であり、人と自然と世界と繋ぐ。現在、横長で漢字か隠し字のシリーズ21点、家族をテーマにしたほぼ正方形の20点、3版3色の横長15点になり、いつか本にしたい。

『カムイミンタラ』創刊号からカットを担当させていただき、近年は賀状の版画を載せてきた。12年前の巳年は「繁 蛇に関係した植物」「竹蛇とホオズキ(カガチ)」「水芭蕉(蛇の枕)」、今年度は「?」と「ジャジャジャジャーン」(先号、ベートーベンの『運命』の楽譜とリンゴ)「せっかちオロチ」(来号予定、『星の王子さま』から連想)を作った。

ところで『?』のなぞなぞ、わかりましたか?

中央のアオムシ巳、2匹が上下逆さに向かい合う形に並び、虫偏にウ冠(帽子)とヒで蛇、食痕にThe 21st century begins. 21世紀は食とゴミ問題の世紀の予感。変身。

ついでに豆知識。虫は象形文字で、もと音、キでマムシ。蟲チュウ(足のある虫)と分けたが、今はみな、虫で表す。虫は派生した意味もあるが、人獣鳥魚以外の動物を指す意がある。

巳・已・己と似た字がある。「ミ(巳)は上に、オノレ・ツチノト(己)下につき、スデニ・ヤム・ノミ(已)中ほどにつく」字形の違いを教える古歌がある。

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