ウェブマガジン カムイミンタラ

2001年09月号/第106号  [ずいそう]    

花と人と…出会い
内倉 真裕美 (うちくら まゆみ ・ 恵み野フラワーガーデニングコンテスト実行委員会事務局長)

中村さんのお婆ちゃまは、園芸家というよりはガーデナーと呼びたい1人である。今は花のまちとしてちょっと有名になった恵み野でフラワーガーデニングコンテストが行われるようになったのは11年前のこと、そのころからお婆ちゃまのお庭とお隣の細井さんのお庭は、通りを歩く人たちの目を楽しませてくれていた。中村さんが土いじりをするようになったのは、恵み野に移り住んだ翌年に細井さんから数個のパンジー苗を頂いたのがきっかけだったそうで、苗と一緒に育て方の手ほどきを受けて、そのパンジーはとてもきれいに、元気いっぱいに花を咲かせてからのこと。お婆ちゃまは「70歳からの手習いですよ」とはにかんだ感じで、ちょっとうつむき加減に目をくりくりさせながら話してくれた。今ではガーデニング歴15年のベテラン。一苗の花を大きく咲かせることに加えてガーデンセンスもなかなかのもので、お婆ちゃまの教えを受けた地域のガーデナーも多い。

そんなお婆ちゃまの庭だが、ガーデニングコンテスト5年目のこと「おや?」と思わせるほど庭に花数が少ない。もしかしたら体の調子が良くないのかもしれない。審査員の方々も皆、お婆ちゃまの体調を気遣った。それから3年間ほどそんな状態が続いていたが、翌年の庭は違っていた。庭には以前のように、もりもりと元気いっぱいに花が咲き乱れて私たちを出迎えてくれた。お婆ちゃまの庭は、不死鳥のごとく見事に蘇ったのだ。
「おばあちゃん元気になったんだよ!」審査員一同、車内で大騒ぎになった。
「おばあちゃんの顔を見なきゃ…」
「内倉さん、おばあちゃんを呼んできてよ」
「はいはい喜んで…」と駆け足でチャイムを押しに行った。お婆ちゃまの顔を見るなり、みんなは手の痛くなるような拍手で出迎え、健康になったことを喜んだ。

私は嬉しかった。お婆ちゃまが元気になったことはもちろんだが、審査員のみんながこうして喜んでいること、みんなが同じ気持ちになったことが何より嬉しかった。

お婆ちゃまとみんなの関係といえば?誰一人として親しい間柄でも何でもない。

1年に1度だけ何の前触れもなく勝手にお庭を審査するのが恵み野流ガーデニングコンテストで、時には庭主さんさえ知らないこともある。

でも、庭は花を通していつも作り手を語ってくれていたのですね。

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