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2002年09月号/第112号  [ずいそう]    

春国岱での鳥たちとの出会い
篠木 秀紀 (しのき ひでのり ・ (財)日本野鳥の会 根室市春国岱原生野鳥公園担当レンジャー)

「春国岱(しゅんくにたい)には様々な自然のエッセンスがつまっていて、多くの野鳥が暮らしています。実際に歩いてみるとわかりますよ」と言って、ネイチャーセンターを訪れた来訪者を春国岱へ送り出しています。私は春国岱へやってきてまだ数カ月しか経っていません。しかし、この短い期間でも、お客さんに自信を持ってそう言えるだけの生きものたちとの出会いが春国岱にはありました。

鳥たちの春の渡りと時を同じくして、私は大きな希望とほんの少しの不安を抱きながら、本州から根室へ今年の春先にやってきました。春国岱は根室半島の付け根に位置し、風蓮湖に浮かぶ長さ約8キロの広大な砂州です。初めて歩いた春国岱は戸惑ってしまうぐらい数多くの水鳥や、まるで畳のように大きいワシが飛び交っている姿があってとにかく驚きました。子育てに勤しむ春から夏の時期には、春国岱の森ではカモメが上空を飛び交う中、本州では高山に行かなければ聞く事ができない小鳥たちの美声を楽しむことができるという、不思議な体験をさせてもらいました。今までの自分の自然に対する常識を覆された感じがしました。

これから秋風と共に北の地で子育てを終えた水鳥が春国岱に大挙して渡来します。その中でも、田んぼのような浅い水辺で生活していてとても長い距離を渡るシギやチドリが8月から10月にかけて訪れます。その旅路は、北極に近い繁殖地から南半球の越冬地まで、およそ1万キロにも及びます。長旅の途中に春国岱では羽を休め、餌をとり渡りのためのエネルギー補給をしているのです。春国岱には潮が引くと現れる広大で豊かな干潟、塩湿地、磯場、砂浜、湿原など、シギやチドリが好む環境がそろっているため、それだけ多くの種類が訪れます。これからどんな出会いが待っているのか、とても楽しみです。

春国岱は日本でも有数の渡り鳥の渡来地で、いつの季節も多くの野鳥が迎えてくれます。秋の空の下はるか遠くへ渡ってゆく、翼を持った旅人たちに会いに、春国岱に来てみませんか?

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