ウェブマガジン カムイミンタラ

2002年11月号/第113号  [ずいそう]    

地域文化財に思う
東田 秀美 (とうだ ひでみ ・ NPO法人旧小熊邸倶楽部代表)

私たちの会の名称にある「旧小熊邸」は、札幌市中央区南1条西20丁目に建っていた、北海道を代表する建築家・田上(たのうえ)義也設計の住宅である。解体される予定の建物が、市民活動によって移築保存が決定し、藻岩山の麓で喫茶店として再利用されている。

その建物の保存再生活動のために設立したのが「旧小熊邸(おぐまてい)倶楽部」だ。倶楽部は、図面の作成や照明器具・絵ガラスの復元など、歴史的な建物を民間レベルで再活用するために必要な、さまざまな技術をプロデュースした。その後、そのノウハウを次の活動に使うためにNPO法人格を取得、現在も北海道内の歴史的建築物の保存再生活動を展開している。

実はこの情報誌の発行元である「りんゆう観光」さんが管理されている東区北9条東2丁目の木造建築物も歴史的建造物だ。その建物は、昭和初期に故植田繁太郎さんが建て、住居として使用していた。現在もりんゆう観光社屋の隣に、倉とともに建っている。もっと近代的な建物をと望むことが多い一般企業が、これだけの地域文化財を再活用しているということに、建物の一ファンとして「本当にありがとう」とお礼を言いたい。

北海道は本州とは違って、自分達の歴史を大事にしようという意識は低い。たとえ指定文化財にならなくても、その地域にとって大事な地域文化財があることに気づかない。結果的に失ってから「ここに在った建物が、風景に安らぎを与えていた」と気づいても遅いのだ。歴史は二度と戻れない。風土と文化は、市民の中に積み上げてこそ、意味がある。その過ごしてきた道のりと過程に意味がある。そんな気持ちで、活動を続けている。

「個性ある街なみ」や「その地域の街づくり」は、地域文化財なしでは語れないと思う。地域文化財のもつ意味や街への役割を、多くの人に分かってもらいながら北海道の街を創っていきたい。

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