ウェブマガジン カムイミンタラ

2003年07月号/第117号  [ずいそう]    

ホタテ(アイヌ名 セイコヤンケ)との出会い
平田 博文 (ひらた ひろふみ ・ 北海道東海大学工学部生物工学科教授)

私とホタテとの出会いは10年前である。縁あって北海道に赴任して間もない頃、妻が近くのスーパーで買ってきた貝柱の刺身であった。私は石川県出身で、妻は三重県なので、海産物はいろいろ食していたのであるが、ホタテは初めてであった。家族全員ホタテが気に入り、その美味を満喫している。当時、ホタテの研究に携わるとは全く考えていなかった。ただ、赴任して1~2年経った頃だと思うが、ホタテ内臓の投棄の記事を読み、北海道では大きな問題なのだという認識だけは持っていた。

大学では酵素を使っての有用物質の製造に関する研究をしていたわけだが、両親の死去を機に本籍を札幌に移してから、北海道の産業に関係する研究に関心を抱くようになった。そして、3年前にマリン・サイエンス株式会社(本社・札幌)の依頼で、学科は違うが学生を紹介した。このことがホタテの研究を始めるきっかけとなった。そして昨年、同社社長の高橋鑛(ひろし)氏から共同研究の依頼があった。社長によれば「北海道に貢献したいのでこの仕事を始めた」、「この開発により漁業者の負担を軽減したい」とのこと。その言葉に後押しされて本格的に研究を開始した。

ホタテ内臓の処理方法には、いくつかの方法が知られているが、現実問題として種々の課題があると聞いている。私たちのプロジェクトでは新しい方式を考案し、実験・検討した。幸いにも、食品基準以下にカドミウムを除去することに成功し、本年5月にはパイロットプラントの公開までこぎつけた。ホタテ産業は北海道の重要な水産業の1つである。有害金属であるカドミウムが除去できれば、残りの固形物は飼肥料などに有効利用ができ、さらに、環境にも優しい産業となるものと期待している。このような研究を通して北海道産業に寄与ができればと考えている今日である。

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