ウェブマガジン カムイミンタラ

2006年01月号/ウェブマガジン第7号 (通巻127号)  [ずいそう]    

三角山放送局で、いっしょにねっ!
木原 くみこ (きはらくみこ ・ 三角山放送局 (株)らむれす代表取締役)

サトイモ家族 版画:宝賀寿子
サトイモ家族 版画:宝賀寿子
(レンガ館)

1997年、コミュニティFM三角山放送局は札幌市西区に開局しました。今年4月、9年目に突入。早いものです。

小さな放送局ですが、一日中、いろんな人が入れ代わり立ち代わり出入りし、とにかくにぎやか。3組座ればいっぱいになる打ち合わせスペースは、常に満席状態。人が通るのもままならない状態です。パーソナリティは、だいたい120名くらい(正確な数は誰も知らない)。ひしめきあって暮らしてまいりました。

その三角山放送局のことで、嬉しいお知らせがあります。今年4月、琴似駅北口レンガ館に新スタジオが完成します。

このレンガ館は昭和4年(1929年)に建てられ、永らく琴似のシンボルとして愛されてきた建物で、皆さんもよくご存知だと思います。それがこのたび琴似駅北口再開発計画で保存が決まり、そこに三角山放送局のスタジオができることになったのです。

その新しいスタジオを、私たちは夢のスタジオにしようとしているのです。

三角山放送局の合言葉は「いっしょにねっ!」。地域での共生をテーマに活動を続けてきました。障害者と健常者がともに、ごく普通に話し合える「番組づくり」「場づくり」をと、地域の方々とともに実践してきました。

開局当初から、電動車椅子のパーソナリティ山本博子さんの「飛び出せ車椅子」、網膜色素変成症で目が見えない福田浩三さんの「耳をすませば」など、身障者自身が番組を持ち、自分の考えを語り、それを地域の人が手助けすることにより、共生の輪が広がってきました。平成16年(2004年)には、「北海道福祉のまちづくり賞ソフト部門最優秀賞」をいただきました。

しかしです、私たちは気がついていました。放送局が実は「バリアだらけ」なことを!

いまや、公共の建物ではユニバーサルデザインはあたりまえですが、残念ながら、放送機器はすべて健常者用にできているのが現実です。障害者用の放送機器というものが無いのです。障害者が、レギュラー番組のパーソナリティを務めることも、放送機器を操作することも、念頭になかったのです。

障害があっても、もっと自由に発信できるように、障害者の自立と尊厳を守るためにも、ハード面の充実がぜひとも必要なのです。

ということで、無いものは作るしかない! やや分不相応な試みかもしれませんが、なんと北海道工業試験場さんと共同で障害者用の放送機器を研究開発中です。弱力でも使えるフェザータッチのマイクスイッチ、目が見えないパーソナリティに、振動で合図する装置、などなど。

必要から生まれてきた機器が、どんなふうに活躍してくれるか、とても楽しみです。

地域とは、少数派で成り立っていると私たちは考えます。「少数派を決して切り捨てない。小さな声、弱い声こそ大切に!」。この思いを、けっして忘れずにいたいと思います。

今度できるレンガ館の新しいスタジオは、そんな私たちの夢のスタジオなのです。

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