先日、素晴らしい話を聞いた。大学生協の本部の書籍担当の方の話で、最近いくつかの大学生協の書籍の売上げが増えているという。
でも、その理由がわからない。現在、全国的に本屋の売上げの低迷が続いている。その中でここ2年ほど伸びているという。さらに、最近の大学生の顔が以前とは変わってきている、締まっているというのだ。
いろいろ考えて、もしかしたらと思いついたのが、「朝の読書運動」。この運動を始めた頃の子どもたちが今、大学2年生くらい。この運動で本を読む習慣が身についた学生たちが本を買っているのでは…と。
確認はとれないけれども、もしそうであれば、こんなうれしいことはない。単に業界の売上げの話だけではなく、子どもの読書離れが続き、その弊害がいろいろと言われているからだ。
たとえば、文章を理解できない学生が増えているという。新聞を読んでも、その記事が何を言おうとしているのかよく理解できないという。
文章を理解するのはすべての学問の基礎で、それは本読むことで鍛えられるはずだ。札幌市の調査で、1カ月に1冊も本を読まない「不読者」の割合は、小学生で11%、中学生28%、高校生は37%にもなるそうだ。大人のデータは無いのだが、さて…。
「朝の読書運動」は、毎朝学校で授業前の10分間、児童・生徒と教師の全員が自分が読みたい本を自由に読む読書運動で、1988年に始まり、現在全国で2万校(実施率51%)、742万人が取り組んでおり、実施校ではさまざまな成果を上げており、高い評価を受けている。
しかし残念ながら北海道は、実施率30%と全国平均を大きく下回っている。先ほどの話もある。われわれは何とか実施校を増やしていきたいと考えている。
さて、北海道の書店組合では2004年から、特に読書離れが激しい中学生への取り組みとして、「本屋のオヤジのおせっかい "中学生はこれを読め"」というフェアを展開している。中学生向きの棚が本屋に無いことを反省して始めた取り組みだが、昨年全道62書店、今年は静岡県でもフェアを実施し、愛知県でも決定している。今後、全国への拡がりを期待している。
そしてこの一連の取り組みと中学生向き500冊のリストが今年、北海道新聞社から出版されることになった。
そこで私どもはこの本を「朝の読書運動」促進のツールとして、全道の中学校への寄贈を考えている。図書購入の資料として、また、中学生が本屋に足を運ぶきっかけになればと考えている。
大ベストセラーになっている『国家の品格』の著者・藤原正彦氏は、「我が国の劣化しきった体質の改善は国語教育にかかっており、読書は過去も現在もこれからも深い知識、教養を獲得するためのほとんど唯一の手段である」と言っている。
われわれの責務は重い。