退任を前にした小泉首相が8月15日に靖国神社に参拝するのか、ポスト小泉がこの問題でどのような態度をとるかがマスコミの話題となっているが、日本経団連と並ぶ財界の有力団体の経済同友会が5月9日に首相の靖国神社参拝中止を求める提言を出して波紋を呼んでいる。
「政治関係の冷却化が経済、貿易面にも負の影響を及ぼす」「国民のあいだでもコンセンサスが得られていない」として、「再考が求められる」としているものだが、マスコミの取り上げ方は「財界人として商売の支障になることはやめてほしい」というのが本音であるというようなものが多い。
しかし私にはそれだけとは思えないのである。個人加盟の同友会は企業加盟の経団連と違って、例えば終身幹事の品川正治さんのように護憲や消費税増税問題でユニークな発言をされている方もおり、「顔の見える」団体という印象が強い。メンバーの多くは戦争体験世代であり、今回の見解も単に経済的な思惑だけでなく、日本がかつての道に回帰するのでは、という危惧がその背景にあると思えてならない。
経済界だけでなく、政界もそうである。自民党にせよ民主党にせよ、勇ましい発言をくり返すのは戦後生まれの世代が多い。
それに対して護憲や靖国問題での慎重な発言はむしろ長老といわれる年代の人に多い。つい先日亡くなられた箕輪登さんがそうであったし、故後藤田正晴氏、野中広務氏など、一時「タカ派」と言われた人々がこれらの問題では慎重な発言をくり返している。これらの人々の胸の片隅には、常に戦争で死んだ同僚や家族のこと、多くのアジアの人々に与えた被害があったに違いない。
政治や外交の問題は世代論で語れるものではない、とのご批判をいただきそうだが、昭和15(1940)年生まれ、多少とも戦争体験をもち、戦後昭和22(1947)年に学童となった「新憲法、新教育基本法の1期生」を自認する私としては、どうしてもそこにこだわりたいのである。