「耳の不自由な人には字幕つき、目の不自由な人には副音声つきで、映画をみんなで観よう!」。初代代表の林淳子さんが常に前向きな行動力と個性で会を牽引し、会員一人ひとりが出し合った知恵と工夫が大きな技術力となって、次々と奇跡を起こしてきた(?)ムービー北海道。この最高の素人集団の活動が、ことし16年目となりました。なんだか映画会社に間違われそうな名前ですが、障害者と映画の架け橋をめざす札幌市社会福祉協議会に登録しているボランティア・グループです。
昨年代表となるまで14年間、私は庶務広報担当などの裏方として会の喜怒哀楽を見てきました。このボランティア活動を通して出合ったさまざまな人々や事柄は、私にとって大きな財産となりました。
字幕や副音声をつけるのは手間のかかる作業です。映画のすべての音を、文章起こしから始まり、セリフが正しく読みやすく文字化されているか、効果音が適切に表現されているかなど、何度もチェックし、工夫を重ねます。20~80代のメンバー60人のうち、半数は聴力障害者。光や音のない世界は私には想像もつきませんが、「そこは漢字よりカタカナのほうが…」と、字幕のつけ方の工夫など意見を聞きながら進めてきました。
副音声は、もともとのセリフの音とぶつからないように、ト書きのような情景説明を録音したMDテープのボタンを押します。その回数は50分程度のフィルムで120回にもなります。場面の動きを見ながら練習を重ね、上映会場でも画面を凝視し、ボタンを押します。
地味で根気のいる会の活動を継続させるには、人材とともに機器の確保が不可欠です。パソコンの出現により作業が楽になったと思われがちですが、アナログの漢字タイトラーやワープロを使用した手作業も、今でも続けています。自宅での作業を少しでも簡単に誰でも参加できるように、性能の良いパソコンが2~3台、会の手もとにあったら…と思います。こうして作品完成までには2カ月かかります。
これまで制作した作品は100本近くになりました。ご支援の寄付や助成金でビデオプロジェクターを購入し、出前上映会も実現できました。映画を通じて視聴覚障害者の方との理解と交流の輪を広げています。私たちの活動に深い理解とご支援をくださったすべての方々に、心から感謝しています。もちろん現在もスタッフ募集中!。機器に強い映画好きの方も、まったく初めての方も大歓迎です。
地域にひとつ、いつも字幕つき、副音声つきの映画が上映されていて、耳や目の不自由な方とともに楽しめる映画館があったら…。それがこの会の当初からの夢でした。一人でも多くの方が「見えた!」「聞こえた!」「おもしろかったね!」と感動を共有できる奇跡のバリアフリー上映会…。これからは、会にも私にも第2章となるその夢を少しでも早く実現できるよう、コツコツと地道に、しかし楽しみながら継続していきたいと思っています。