ウェブマガジン カムイミンタラ

2007年01月号/ウェブマガジン第13号 (通巻133号)  [ずいそう]    

「宮の森の環境を守る会」が「地区計画」に至るまで
秋山 眞澄 (あきやま ますみ ・ 「宮の森の環境を守る会」世話人)

「サツマイモ家族」<br>版画:宝賀寿子
「サツマイモ家族」
版画:宝賀寿子

「宮の森の環境を守る会」が創られたのは、20年以上前の1985年(昭和60年)に遡る。低層の住宅街に7階建てマンション計画が突如浮上。当初3階と聞いていた地元住民は驚き、急きょ会を結成。反対署名活動を展開し、市に陳情をおこなった。市議団が現地視察に訪れ、審議・調整の結果、5階建てに設計変更される(高さ24.9m→13.8m)という大幅な譲歩を引き出した歴史がある。

1996年(平成8年)、私の住まい一帯が用途地域「2種住専」から「近隣商業」に変更され、隣の個人宅跡にガソリンスタンドが出現した。それがわずか8年後の2004年(平成16年)春に倒産し、廃油のドラム缶やタイヤが野積みで残された。
 管財人を捜し当て撤去させたが、同年夏、不動産会社が購入し更地にする工事に着手。ところが、ガソリンタンク解体の初日に爆発炎上事故を起こし、何と死傷者を出してしまったのである。
 幹線道路の交差点に化学消防車やパトカー、へリコプターまで飛び交って通行止めされ、全国ニュースになったあの日。2004年8月30日の喧騒と不安は、今も脳裏に焼きついている。

結局、原因不明のまま解体工事は完了。"周辺との調和を考えた"と称する10階建てのマンション計画が11月末に掲示された。
 狭い生活道路を境に風致地区に面し、交差点角にそびえ立つ建物は、視界を遮り、地域にとって受け入れ難い計画である。街に生じた大きな問題と捉え、隣地住民の立場から集会を呼びかけ、「宮の森の環境を守る会」の名称を引き継いだ。

先ず、この要の土地に対する地元の意見を集約するために、アンケート調査を実施した。1週間で550部配り、約半数の269部を回収。「景観を奪わないで欲しい」と共に「安全に配慮した設計」を求める声が圧倒的に多く、これを糧に、建て主に対し再々要望書を届けた。
 住民説明会が6回程もたれたが、現行の建築基準法の下では、この計画自体を止める手立ては皆無に思われた。

同じ頃、地域の建物に高さ15m制限をかけた「市民提案地区計画『南円山6条』札幌第1号」を知り、代表の方を招いて講演していただいた。市の都市計画担当者を交えての「地区計画提案制度」学習会と住民集会を繰り返し続けた。
 そして約半年後、私達の意を受けて、不動産会社は、ついに大幅設計変更(高さ20m弱:6階建)を提示してきた。経済原則をもって旨とする業者側にこれ以上の譲歩は望めず、安全面について担保するよう町内会も連名して工事協定を結び、近隣協議会を設け、無事故で今日に至る。

一方で、この交差点を挟む4ブロック(3.7ha:地権者97名)について地区計画を検討し、意向調査を経て原案を作成。発端となった土地の所有者である不動産会社も賛同署名され、提案の要件を満たすことが叶った。地権者の8割を超える同意を以って2006年(平成18年)5月、札幌市に対し、共同提案者9人連名で計画提案書を提出した。9月の事前説明を経て11月、都市計画審議会は「宮の森緑地北地区」地区計画について全員賛成で採択した。そして、住民提案で市が策定したこの「地区計画」は、同年12月13日、ようやく正式決定、告示されたのである。今後、当該地における新規の建築は、高さ15m(500m2以上の土地の場合は20m)以下に規制されることとなった。あとは2007年度の市議会を経て条例化を待つばかりである。

たくさんの人の協力と理解が相まってようやく達成できた地区計画である。地域コミュニティのために、この「宮の森の環境を守る会」の経験が次世代に継承されていくことを願っている。

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