昨年10~11月の2カ月、映画『Marines Go Home-辺野古・梅香里・矢臼別』の上映と取材のため、アメリカへ行ってきました。私たちのつくった映画が「Marines Go Home(海兵隊はアメリカへ帰ってください)」という以上、彼らはいったいどこからやって来て、どこへ帰ればよいのか知りたいと思っていました。
取材して実感することは、空襲などの経験がなく常に他国を戦場としてきたアメリカでは、戦争を知っているのは、兵士たちだということです。中間選挙でのブッシュの敗北、イラク増派に対して議会で反対決議があがる…今日のアメリカの変化を生みだす契機になったのは、現役兵士や帰還兵、その家族たちの、文字通り命がけの「NO」の声でした。
イラクへ派遣されながら、「良心的兵役拒否」を主張し、武器を一切手にしなかった陸軍兵士、オウジー。日本への駐留経験がきっかけとなり、イラク派遣を拒否した海軍兵士のパブロ。イラクで上官からレイプされ続け、二度目の派遣を拒否したスーザン。米兵3名の殺害に対する報復に百人以上のイラク人を殺害した戦闘を経験した後、再度のイラク派遣を拒否したダレル…国防省の発表でも、許可なく軍務を離れている兵士は8千人以上に上ります。
違法な戦争に参加し、人殺しに加担し、軍人生活を全うするのか。あるいは「NO」という意思表示をするのか。いずれにしても苦渋の選択です。戦場で人を殺してしまった青年は、PTSDに苦しみ、元の自分には、一生戻ることはできません。一方、イラク派遣や人を殺すことを拒否すれば、軍事裁判にかけられます。刑期を終え、軍隊は辞められても、その後の人生に「祖国の裏切り者」というレッテルがついてまわります。
「祖国のために尽くしたい」「大学へ進学したい」「家族を養うため」―軍人になる理由を聞けば、素朴な愛国心の他、今の生活を変えたいという願いがその主な動機だということがよくわかります。学歴社会のアメリカでは、大学卒業資格は必須です。しかし、学費は高い。「一生時給5ドルで暮らすのか、それ以上を望むのか。軍人になれば大学に行ける、この境遇から抜け出せる」―軍のリクルーターたちは、言葉巧みに近づきます。アメリカの格差社会の底辺で、青年たちは戦場へと押し出されて行きます。
今の日本を考えるとき、このアメリカの青年たちに、日本の青年たちや子どもたちの顔がダブって見えます。着々とすすめられる在日米軍の再編という名の日米の軍事的一体化、広がるばかりの日本の格差の有り様を見れば、アメリカの今が、私たちの近未来として近づいてくるように思えるからです。
もうすぐ、イラク戦争が始まって丸4年。2003年に戦争が始まった、3月がまた、やってきます。アメリカでは3月17日に、首都ワシントンで50万人規模の反戦集会が予定されています。3千人以上の米兵が死に、65万と言われるイラク人が死に、週に20億ドル費やす戦争に"NO"を突きつける、かつてない熱い集会になることでしょう。
アメリカの人たちが戦争にNOと言っても、私たちの国が協力し続ける限り、地上から戦争がなくなることはありません。今、私たちに求められているのは、戦争への加担を拒否する、アメリカ以上の熱なのではないでしょうか。
*イラク開戦4周年・さっぽろピースウォークは3月17日(土)13:00大通西4丁目集合です。