ウェブマガジン カムイミンタラ

2007年07月号/ウェブマガジン第16号 (通巻136号)  [ずいそう]    

札幌発、世界55ヶ国へ
吉田 三千代 (よしだ みちよ ・ 「飛んでけ! 車いす」の会事務局長)

「猪口(ちょこ)」<br>版画:宝賀寿子
「猪口(ちょこ)」
版画:宝賀寿子

私は、1998年(平成10)5月に設立した「飛んでけ! 車いす」の会で事務局長をやっています。今年は、活動10年目の年になります。

日本では使われない車いすを提供して頂き、丁寧に整備して、旅行者の預け入れ手荷物として、途上国で車いすを待っている障がい児・者に、直接手渡しで届けてもらう、という活動です。この9年で世界55ヶ国に1380台の車いすが飛んでいきました。

自分でも9台の車いすを運びましたが、印象的なのは1台目です。設立総会の翌日に、子ども用車いすを厳重に梱包してタイへ運んでいきました。先住民女性会議の通訳を頼まれた旅の途中でした。15キロはあったでしょう。梱包すると、持ちづらい大荷物です。空港まで取りにきてくれた人は、障がい者の自立活動団体で働くトポンさん。彼にも重度な障がいがあります。

翌日、関係大臣に会いました。「日本からの車いす寄贈」から何百台も期待していたようで、「1台ずつです」と話すと、お昼をおごるという約束も反古になりました。この最初の車いすの行方は、後で電話やファクスをしても、わかりませんでした。

それから9年、トポンさんは私たちの活動をよく理解してくれるパートナーに成長しました。車いすも、梱包せずに押して持っていけるようになり、旅行者の方たちからは、「素晴らしい笑顔をもらえた。簡単なボランティアなのに旅が変わった」といった声が多く寄せられます。その結果を提供者にも伝えられるようになりました。

今の課題は、現地での車いすの整備や修理です。最後はゴミになってしまうとしても、できるだけ長く、安全に使ってもらいたい。そのため、毎年行うスタディーツアーも、ここ3年は「整備」や「整備技術移転」を兼ねてのツアーです。今年は、タイのトポンさんの所に出かけ、交流や意見交換をする「障がい者フォーラム」も入れたツアーを晩秋に計画しています。

差し上げた車いすで商売を始めて成功している人、電動車いすを使って英国の大学を卒業した人もいます。が、車いすを上げても介助する人がいない、周囲の目が厳しいなどの理由で使えない人たちがいることもわかっています。そんな人たちにも会い、タイでも車いすの整備をすることになるでしょう。

あっという間の9年間でした。孫が3人できましたが、家族といる時間は減りました。
 好きだった登山も休止状態です。そういう楽しみは次の10年に取っておきましょう。

関連リンク「飛んでけ! 車いす」の会  http://business4.plala.or.jp/tondeke/

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