ウェブマガジン カムイミンタラ

2008年01月号/ウェブマガジン第19号 (通巻139号)  [特集]    

道産材を活かす
木材資源で新たな脚光

  輸入木材の激減を背景に道産木材が脚光を浴びています。特にカラマツでは樹齢45~50年の大径木が多くなり、加工技術も確立されて、住宅建材としての利用が増えてきました。しかしその現実はまだまだ厳しく、トドマツやスギ、広葉樹を含めて新たな視点から、その利用や森林再生を考えなくてはならない時期に来ているようです。

行き場を失ったカラマツ

イメージ(大量植林されたカラマツは道産木材の中心です)
大量植林されたカラマツは道産木材の中心です

北海道のカラマツは昭和30年代(1955年~)ころから主に炭鉱の坑道を支える坑木向けとして大量に植林されました。北海道で育つカラマツは成長が早い割に強度もあることが特徴。坑木用なら20年程度で出荷できます。ときは石炭が黒いダイヤと呼ばれた炭鉱の隆盛期で、需要もうなぎ登り。「カラマツを植えてハワイに行こう」というスローガンさえあったそうです。また電柱や建設の足場丸太などの需要もありました。

ところがエネルギーの主役が石炭から石油に移ったことで1970年代から炭鉱の閉山が相次ぎ、坑木需要が消え去ります。電柱はコンクリートに、足場はスチールなどに取って代わられ、山で育っているカラマツは行き場を失いました。ただし荒れ放題となった山は意外に少なく、民間カラマツ林は大半が森林組合などによって間伐などの手入れが続けられてきました。現在、樹齢40~45年のカラマツが道内の至るところで見られるのです。

イメージ(カラマツはパレットや梱包材向けがほとんどでした)
カラマツはパレットや梱包材向けがほとんどでした

その間、間引きされた間伐材は荷物を載せるパレットや機械類などを運送する際に使われる梱包材として使われてきました。旭川市にある道立林産試験場は、カラマツ人工林の割合が飛び抜けて多いという北海道の事情を背景に、その利用技術を研究してきました。2005年に同試験場から発行された「カラマツ活用ハンドブック」には「当場の1960年代後半以降の歴史はカラマツとともにあったと言っても過言ではありません」とあります。

安いから売れるが…

イメージ(製材の効率化も林産試験場の課題でした)
製材の効率化も林産試験場の課題でした

梱包材やパレット向けの木材は安いことが命です。ライバルは輸入材はもちろんですが、鉄やプラスチック、段ボールなど。原木の安さとともに加工の低コスト化が求められ、道内の製材工場は大型化し、作業工程でもツイン帯鋸盤の導入などで低コスト化が図られました。鋸(のこ)でひく場合、1つより2つの鋸で同時にひけば効率が格段に上がります。同試験場ではツイン帯鋸盤の試験などを行って、工場での導入に役立てています。

間伐材の新たな使い道となっているのが、ラミナと呼ばれる集成材の原板です。板を何枚か貼り合わせて建物の柱や梁(はり)などに仕上げます。集成材は90年中ごろから住宅などに使われ始め、その原木としてカラマツも使われ始めました。

北海道で植林されたカラマツは成長の早さが最大の特長ですが、欠点もありました。それは割れや狂いが出やすいことです。集成材はその欠点を補うものでした。林産試験場では人工乾燥やつなぎ合わせ方などを研究し、成果を上げます。しかしラミナの出荷価格は梱包材やパレットとほとんど変わらなかったのです。同試験場企画指導部の石河(いしこ)周平主任研究員はこう言います。

イメージ(林産試験場の「木と暮らしの情報館」にもカラマツの集成材が使われています)
林産試験場の「木と暮らしの情報館」にもカラマツの集成材が使われています

「梱包材の市場をこれだけ確保できたのは、カラマツの値段が安かったということ。最近カラマツが全国的に引っ張りだこになっているのは外材が入ってこなくなって、その代替として集成材や合板向けに北海道のカラマツを求めだした。やはり値段が安いことに尽きる気がします。我々から言わせれば、買い叩かれ続けています」

統計によると、2006年の外国からの木材輸入は5年前に比べ、丸太が67%も減少、製品も20%減少しており、ここ2年ほどの減少は「世界的な木材需要の拡大や為替、フレート(運賃)高等の影響」としています。特にロシアから輸入されていた「北洋材」が中国などに流れ、日本に入って来なくなりました。北洋材は樹種が国内材とよく似ており、カラマツが多かったため、その代替として道産カラマツの需要が拡大したのです。しかし価格は相場に左右されるのみで、林業振興にまでは結びつかないのが現状です。

まだまだ困難な山の再生

イメージ(「大径木の利用が課題」と猿渡組合長)
「大径木の利用が課題」と猿渡組合長

十勝中央森林組合は芽室町、帯広市、中札内村のそれぞれの森林組合が合併して誕生した組合です。組合長の猿渡房信さんは46年前に組合職員になり、カラマツ造林とともに歩んできました。カラマツに寄せる思いは誰にも負けないといいます。価格維持のために組合が製材工場を経営するなど、営林だけでなく、少しでも木材の付加価値を高めて価格を安定させる努力を続けてきました。

輸入材の急減を受けて、2006年からカラマツの価格が急上昇し、伐採が進みました。しかしそのあとの植林は進んでいません。

「去年、一気に値上がりし、40年や45年のカラマツが1ヘクタールで30万円から40万円程度だったものが60万から70万円になりました。でも伐採したあとに植える人はほとんどいません。せっかく40年間置いて、ちょっと小遣いにはなったけれども、植えるのは勘弁してくれということです」

イメージ(十勝中央森林組合では製材工場も経営しています)
十勝中央森林組合では製材工場も経営しています

カラマツを伐採したあとの土壌は酸性が強くなり、放っておいても自然林には戻らないと猿渡さんは言います。酸性に強いシラカバやヤナギは生えてくるけれども、ニレやタモなどにはならないそうです。いまのカラマツ林の多くは2回植林した2次林で、酸性の弊害は3次林くらいから現れ始め、成長が遅くなるので、アカエゾマツを植えたりします。

「カラマツの伐期が50年だとすれば、トドマツは70年、アカエゾマツは100年経ってもだめだと思います。自分で植えて自分の収入になるのはカラマツくらいで辛うじてトドマツも。一生に1回収入を得られるのはカラマツくらいなんです」

それではどれくらいの収入があれば植林の意欲が高まるのでしょうか。猿渡さんは45年~50年のカラマツ林で1ヘクタール100万円近い収入が必要だと考えています。1ヘクタール植林するのに苗代などすべて含めて65~70万円かかります。植林には国の補助があるので、自己負担は38%。25~27万円かかる計算です。60~70万円の収入があっても、その半分を植林につぎ込まなければなりません。

1ヘクタールの山が50年でたった30万円程度の収入しかもたらさない、しかもそれは価格が上昇したこの1~2年のみで、先行きは不透明。値上がりする前までは植林しようとすると収入の大半が消えてしまうという現実があったのです。組合員のほとんどは農家で、莫大な投資をしながら畑作や酪農などを営んでいます。植林は投資の対象として考えればあまりにも貧弱で、二の足を踏むのは当然かもしれません。現実に十勝の市町村が所有する山では財政難を理由に間伐など手入れも満足に行われないケースがあるそうです。

「本人の持ち出しがゼロとか、5%程度ならば、組合員に受け入れてもらえると思うのですが、38%では我々の努力も限界があります」

大径木の利用も課題です。50年で伐採すると直径40センチほどの丸太になりますが、その利用法が進んでいません。加工用の機械も小中径木用に設計されているため、大径木には対応できないのです。そんな中、大径木からつくった柱や梁(はり)など住宅構造材への利用が始まっています。

「カラマツ王国十勝」で

イメージ(十勝支庁は積極的にカラマツの家づくりを支援してきました)
十勝支庁は積極的にカラマツの家づくりを支援してきました

2004年(平成16年)、十勝の森林組合、製材業者、設計士、工務店が集まり「とかちの木で家をつくる会」が結成され、十勝支庁もオブザーバーとして参加しました。十勝支庁では平成11年度(1999年)からカラマツを住宅建材として利用するため「カラマツ王国十勝活性化事業」を3年にわたって展開し、道内でいち早くカラマツの利用促進策を進めてきました。

それまでのカラマツは梱包材とパレット材、残りは紙の原料のチップにされており、住宅建材はほとんどありません。そこでカラマツ林の面積が道内の支庁でもっとも広い十勝が率先して始めたのが住宅建築への利用策でした。3年間の事業が終了したあとも、支庁ではさまざまな形で事業を継続し、民間による「とかちの木で家をつくる会」の結成までこぎ着けたのです。

イメージ(瀬上さんが建材に取り組み始めたのは10年ほど前でした)
瀬上さんが建材に取り組み始めたのは10年ほど前でした

幕別町の瀬上製材所社長、瀬上晃彦さんも会のメンバーの1人です。瀬上製材所ではカラマツの間伐材を使ってパレット材や梱包材などを製造しており、かつて建材はまったくつくっていませんでした。

「10年くらい前ですが、工務店さんから『カラマツがたくさんあるのに外国の木を使う手はない。カラマツの建材をつくってよ』と言われました。でもカラマツで柱や梁をつくるとなると、大変なことになるんじゃないかという先入観がありました。ところが話をしているうちに、本来は逆に我々製材業者がカラマツで建材をつくって、こういうのがありますから使ってください、と勧めるべきだったと思ったんです」

独特な欠点を克服

イメージ(カラマツはこの乾燥室に入れられます)
カラマツはこの乾燥室に入れられます

カラマツの間伐材は小中径木でねじれ、曲がり、反りなど出やすく、しかも割れやすいという住宅建材としては致命的な欠点がありました。またヤニがしみ出ることも欠点でした。しかしそれは林産試験場が開発した乾燥技術で克服されていたのです。

割れを防ぐには乾燥温度を100度以上にする高温乾燥が有効で、ねじれなどには木材を押さえつけながらの高温乾燥が、ヤニには蒸気乾燥が有効でした。また乾燥後は桟積(さんづ)みして1ヶ月ほど養生することで、曲がりや反りが防止できます。

「製材してすぐに乾燥機にかけています。乾燥が終わったあとも、倉庫に3ヶ月とか半年とか置いておく。水分が高いところから低いところに移っていって均一になっていきます」

高温処理をしないころ、住宅用建材としてのカラマツの納入は1年に1棟ほどでしたが、高温乾燥設備を導入してからはどんどん増えて、2007年は16棟分になりました。しかし瀬上製材所が出荷するカラマツ材の建築用材はほんのわずかで、全体の7割がパレット材、残りのほとんどが梱包材であることには変わりありません。

「山を育てる人が続かないのが最大の問題じゃないでしょうか。我々は資源がないと経営できないんですから。50年100年先のことをことを考えてアクションを起こしていかなくてはと思います。無くなってからでは遅いんですから」

身近に豊かな森林があっての製材業です。先行きに不安を覚えているのは林業も製材業も変わりありません。

カラマツにこだわった家を建てる

イメージ(佐藤さんはカラマツにこだわった家づくりをしています)
佐藤さんはカラマツにこだわった家づくりをしています

同じ幕別町のホームテクト佐藤はカラマツ住宅にこだわった設計施工を行っている工務店です。社長の佐藤正幸さんは元北海道開発局の職員で、民間企業を経て1993年に同社を立ち上げました。当初は外断熱のブロック住宅を手がけていましたが、カラマツ材の将来性を見越してカラマツの家を造り始めました。住宅に使われる木材の9割をカラマツが占め、柱や梁は集成材ではなくほとんど無垢を使用、残りの1割もトドマツであったり極力道産材を使っています。

「森は生命の源であり、生命の維持装置。だから森を活性化する上でも地元の木を使うことが我々の使命かなと思っているんです。でも使命感はあとからついてくるもので、やはり私たちが飯を食うためですよ」

カラマツを中心に木材をふんだんに使った家を建てれば高価なものになるというイメージを持たれがちですが、そうでもありません。ホームテクト佐藤の住宅は建て売り住宅とそれほど変わらない価格になっているそうです。

これまでの10年間で50棟ほどカラマツの家をつくってきましたが、当初はやはり不具合が出ていたそうです。しかし今はほとんど問題ないレベルになっています。

「使ってみて一番感じたのは、乾燥が悪いと我々が非常に苦労するということです。柱や梁がねじれたり、フローリングが反ったりすいたりでクレームで苦労しました。瀬上さんのところで乾燥技術が確立されてからは問題がなくなりました。また乾燥した状態でストックしてくれているので、不自由なく材料が手に入るようになりました。それまでは頼んでから1ヶ月くらいかかったんです」

建築技術の向上にも

イメージ(乾燥技術の開発で用途は大きく広がりました)
乾燥技術の開発で用途は大きく広がりました

カラマツは硬い部分があってひきにくかったり、部分的に欠けやすい、またほかの木材より重いといった特徴があり、ねじれなどのほかに大工さんが嫌う要因にもなっていました。それも克服されているようです。

「ねじれやすいとか、欠けやすいとか、硬いとかいろいろ特色はあるけれども、大工さんはみなさん工夫してやっています。それにやりがいがあると言っていますね。それまでは工場でプレカットしてきたものを組み立てて、ボードを付け、クロスを張って仕上げてしまう。うちの家は手間が1.5倍くらいかかるし、技術が必要で、職人の養成にもつながっています」

お客さんの反応は上々だそうです。

「やっぱり空気の感じが違うと思うんです。木は臭いを取るし、湿気を吸ったり吐いたりしながら湿度を調整してくれる。実際にカラマツの家をつくって分かったんですけれども、空気がぜんぜん違うなと。それまではあまり木のいい点って分かっていませんでした」

イメージ(カラマツや家づくりの情報が満載された十勝支庁制作のCD)
カラマツや家づくりの情報が満載された十勝支庁制作のCD

十勝支庁が制作して配布している「とかち発カラマツ住宅」というCDに、カラマツの家を建てた6家族の声が動画として収録されています。それぞれがカラマツに対する思い入れを持って家を建てており、不満はないようです。「ぬくもりがある」といった声が多く聞かれました。

カラマツ材は人工乾燥技術の向上によってほかの木材とほどんど変わらない使われ方ができるようになっています。そして建て主は木のぬくもりや空気の良さにも満足し、製材工場では乾燥技術など加工技術が向上、建築現場では大工さんの技術の向上にも一役買っています。地元の木材を使うことで、さまざまな波及効果を生んでいるのです。

牛も人間も快適に

イメージ(カラマツの牛舎を建てた石橋さん)
カラマツの牛舎を建てた石橋さん

カラマツ材は住宅だけでなく、学校の校舎や体育館、公共施設など、大型建築物にも幅広く使われ始めています。酪農が盛んな道東の浜中町では牛舎に利用され、この1年で4棟建てられました。石橋慶健さんの牛舎もその1つです。

牛舎というより、どこかの公共施設のようなきれいな外観です。フリーストールという牛たちが放し飼いされる牛舎で、高さは10メートルもあります。石橋さんは以前から木造の牛舎を建てたいとは思っていましたが、鉄骨づくりの方が安いために実現は難しい状況が続いていました。ところが鉄の価格が急上昇し、木造との価格差がなくなったため、国の畜産担い手育成総合整備事業の補助を受けて建設に踏み切りました。

イメージ(牛舎とは思えない外見です)
牛舎とは思えない外見です

「法的な耐用年数でいえば鉄骨の方が長いのですが、実際には木造の方が長く使えることはみんな分かっていたことです。でも補助金がらみでできなかった。それが鉄骨の値上がりで、木造と同じレベルとなり、実現できました」

イメージ(木造牛舎は牛にも人間にも良い環境をもたらします)
木造牛舎は牛にも人間にも良い環境をもたらします

鉄骨はアンモニアなどで腐食しやすく、4年に1度はさびを落として塗料を塗る必要がありました。その点木は乾燥状態にしておけば腐食することもなく、腐食しても修理は鉄骨より簡単です。そうした経済的なメリットだけなく、牛にとっても人間にとっても木造牛舎は快適だと言います。

「鉄骨の牛舎とはぜんぜん違い、木は湿度を調整してくれますし臭気も吸収してくれます。夏は涼しく冬は暖かい。夏は外との温度差が4度くらい違います。牛にとってはストレスが少ない環境で、中で働く人間にもいい環境です」

浜中町では2008年に2棟、2009年には3棟の木造牛舎が新築される予定です。牛舎1棟で住宅8棟分の柱や梁を使うそうで、その経済効果も大きくなります。

カラマツの利用は別な視点からも

地球温暖化の対策として、木を育てて空気中の二酸化炭素を吸収し、その木を住宅などの建造物として地上に蓄えて二酸化炭素として空気中に放出しない森林資源の利用が脚光を浴びています。林産試験場ではカラマツの小中径木から柱を取り出す技術も開発しており、それまで使い捨てだったパレットや梱包材向けの木も住宅に使う道を開いています。また原油の高騰で、木材は燃料としても価値が見直されており、化石燃料からの転換という点でも注目されています。

しかし十勝での「木で家をつくる会」や住宅メーカーが地元の木材を積極的に使っていこうという動きはありますが、それが山で森林を伐採し、再度木を植えて育てる気運の高まりまでには至っていません。

この現実をどう打開していくか。地球環境を守るために、お題目を唱えるだけでなく、まずカラマツをどうしていくのか。トドマツや道南のスギ、広葉樹などをどう利用し、山をどう再生していくのか。関係者と行政だけに任された現状では、打開策は生まれそうにありません。新たな視点をもって社会全体で考えてなくてはならない時代を迎えたといえます。


[ 関連サイト ]

とかち発カラマツ住宅(十勝支庁林務課)
http://www.tokachi.pref.hokkaido.lg.jp/ss/rnm/rinmuka/karamatsu/karamatutop.htm

瀬上製材所
http://omniss.jp/wp/

ホームテクト佐藤
http://www.hometect.jp/

関連リンク北海道立林産試験場  http://www.fpri.asahikawa.hokkaido.jp/

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