ウェブマガジン カムイミンタラ

2008年03月号/ウェブマガジン第20号 (通巻140号)  [ずいそう]    

札幌という街に
三部 安紀子 (みべ あきこ ・ 北海道二期会理事長・みべ音楽院院長)

「学(オオバナノエンレイソウ)」<br>版画:宝賀寿子
「学(オオバナノエンレイソウ)」
版画:宝賀寿子

札幌生まれの道産子にとり、60数年も生きていると、この街の変化に驚きを感じる。幼いときの生活環境とはまったく違う現代の生活、そして社会。あまりの変わりように目をみはるばかりだ。

私のこの身は、その世の流れにしぜんに合わせるようにして長い時を何気なく過ごしてきたように思うが、いまの自分の心のどこかには「世の中についていかねば」という必死の思いも潜んでいる気がする。

パソコンなどはまったくその類いで、現代に間に合うように必死である。だからといって、研究する余暇の時間もないので、そこそこ間に合わせてしまう。情けないと思いながら、先にも進めず、常にまあまあのところでストップ。いつか時間があるときに、とパソコンのみならず多くの書籍、CD、DVDも、いつかマスターしようと未来に向かってを夢を追う。

忙しすぎる自分にも責任はあるが、なんでも「ハイ、ハイ」と返事をしてしまう悪い習性も直さねばと思う。しかし、これまで自分ができることは「協力しましょう」の一点張りで生きてきた者が、急に「ノー」とは言いにくいもの。そんな私に友人たちは最近、「そろそろ年齢相応の構えが必要」「若いつもりしていてもダメよ」と口をそろえてさとしてくれる。

若いつもりもないし、少し冷静でいる自分を見つけねばと思うけれど、夢中になってしまう性格であることは確かである。とくに音楽の世界となると、どんなに疲れていても(疲れている自覚もあまりないが)、余計なことすべてを忘れられる。娘はよく「ママは好きな道を選んで、それが仕事なのだから最高よ!」と言う。確かにそうである。そして、最高の仕事をさせていただけることにとても感謝している。

私には最近、ぜひ可能になってほしい夢と理想がある。国際文化都市と言っても過言ではないこの札幌という街に、本格的なオペラもできる劇場を設立することである。幸いにも、札幌市でもこの話が持ちあがっており、その議題の会合には必ず出向くようにしている。

私ども北海道二期会では、今年(2008年)2月2日にホールオペラ「カルメン」を札幌コンサートホールKitaraで公演した。結果は大好評をいただいた。涙がでるほど嬉しく、また頑張ろうとファイトがわいた。

でも、この演目にしても、オペラ劇場で公演ができたら、もっと素晴らしいに違いない。オケピットがあり、オペラカーテンがあり、どんなピアニッシモでもお客さまに鮮明に伝わる…。予定だと7年半後に完成するという計画である。ぜひともこれが実現するよう、心から祈るばかりである。

これから才能ある有望な若い世代がそこで成長し、必ず見事な芸術となって世界に羽ばたいていくに違いない。60年前の時代には想像もつかなかった魂が、きっと素晴らしい土台となって、これから先のまた違う世の中をつくっていくのであろう。

 音楽は未知なる理想へ 私たちの心を導いてくれる
 音楽で救われることは豊富にあり
 音楽で慰められることは常である
 その音楽に いつまでも浸れる私たちでありたい…

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