無縁だった図書館に足繁く通った時期が2年前にありました。事業費38億円をかけ帯広駅の南前に完成したのが2006年3月3日ですから、帯広市図書館が新築移転してまもなくの頃です。
最近ではインターネットで検索すれば必要な資料がほぼ入手できますし、専門書は本屋に行って探すよりネットのほうが時間的に早く、類似・関連本も探して一緒に購入できます。この利便性に気づき利用しはじめてからは、専らこの方法に頼っていました。
しかし、絶版になった本、おそらく一度しか目を通さないだろうと思える本をどう読むか、この方法を解決してくれたのが図書館です。
昨年の4月、中小企業振興基本条例が帯広市で施行されました。市役所、商工会議所、北海道中小企業家同友会帯広支部の三者が1年間討論を続け作り上げたこの条例は、「全国の自治体が参考にすべき事例」(慶応大学・植田教授)と高い評価を受けています。このとき素案づくりから同友会の幹事長としてかかわることになったのが、図書館通いの要因でした。
まったくの門外漢だった中小企業経営者が討論のための素案(条例の必要性・その理念・具体的条項など)をゼロから作り上げるのは、難問で時間もかかります。ネットで「中小企業政策」と入力し、興味をひく本をまとめて購入して目を通す。キーワードで検索して片端から濫読することから始まりました。
"Think small first"(まずは中小企業のことを考えよ)
この言葉はEU(特にイギリス)中小企業政策の中心概念ですが、源流はA.マーシャルの「森のアナロジー」との指摘を見つけました。A.マーシャルの本を購入しようとしたら絶版(?)。帯広市図書館のホームページを開いて検索したら全集がある。それで足を運んだのが最初です(行ったら見当たらなく、未読のままですが)。「政策があれば条例は必要ない」こういう意見を想定し、『自治立法』を読んだのもこの図書館でした。
現在、条例に基づき設置された中小企業振興協議会(4部会で60回近い会議がもたれている)での『提言書』作成が佳境を迎えています。帯広・十勝を豊かで生きがいと賑わいに溢れた街にするため、「創業と中小企業の発展にとり最も適した市域とする」ことが目的です。
創業が活発な諸外国の都市は、共通して文化・教育施設が充実しています。この事例を踏まえ、「街づくり」全体が地域産業(政策)を軸に討論されるべき時期がきています。
夕張市を見るまでもなく、働く場があって街が生き、税収が確保されてこそ福祉・行政サービスが可能なのですから。