ウェブマガジン カムイミンタラ

2009年03月号/ウェブマガジン第26号 (通巻146号)  [ずいそう]    

大雪ふるさと音楽祭 ―水と命をつなぐコンサート―
鎌田 康雄 (かまだ やすお ・ らーめん店主/上川郡上川町)

「ティータイム」<br>版画:宝賀寿子
「ティータイム」
版画:宝賀寿子

2005年の秋、札幌在住のシンガーソングライター山岸育美さんと出逢いました。山岸さんはウガンダ共和国支援団体Peaceの代表を務めており、音楽の活動資金のほとんどを、エイズ孤児をはじめとするウガンダの子どもたちの支援にあてています。

山岸さんたちはナッケデ村というところに深さ50mの井戸を建設しました。村ではそれまで、子どもたちが何kmも離れた溜め池から水を運んでいましたが、それは不衛生な水で、井戸ができてからは水が原因の病気が減り、村の環境は格段に良くなったそうです。
 対照的に、マラリアに病んでいる子どもたち、栄養失調でお腹が異常に張っている子どもたちの写真を見せていただき、胸が痛みました。

山岸さんたちはエイズ孤児のための学校も建設しました。数年後には増築し、屋内は土間ではありますが、親を亡くしたたくさんのエイズキャリアの子どもたちが勉強できるようになりました。子どもたちは配給されたノートと鉛筆を大事につかい、じつにキラキラと目を輝かせながら真剣に勉強しています。今は公立の小学校となり、給食も配給されて、学校内には3基の井戸があるそうです。

これまで水の大切さは頭の中で理解はしていたものの、「上川町は大雪山のふもとの町、石狩川最上流部、すなわち上流階級に住んでいる鎌田です」などとシャレを言っていた自分が恥ずかしく思え、山岸さんとウガンダの子どもたちになにか協力できないだろうかと友人たちと一緒に考えました。
 その結果、上川町の数多いアマチュアバンドに呼びかけ、この水のきれいな上川町から水が命となるウガンダの子どもたちへ「井戸の資金50万円を送ろう」を合言葉に、「水と命をつなぐコンサート」を開催しようということになりました。そして、私が実行委員長となり、大雪ふるさと音楽祭実行委員会が組織されました。

コンサートは2006年から3年間で4回開催しましたが、毎回じつに多くの方々に賛同と協力をいただきました。
 大雪ダム管理事務所、水、川、湖の利活用で活動しているピュアレイク大雪の協力を得て、出演は中・高生バンドからおじさんバンドまで毎年10組以上になりました。ゲストには山岸さんをはじめ、ピアニスト、民謡歌手、声楽家、シンガー、ヒップホップのダンサー、地元のフラダンスチーム、婦人団体などさまざまな分野の方が駆けつけてくださいました。
 出演者みずからも入場券を買い、みんなでセールスを重ね、町外の方々からの善意も寄せられて、資金が少しずつ集まりはじめました。この間、集まった資金はウガンダ共和国のチココ村に送ることも決まりました。そして、第4回のコンサートで目標の50万円を突破することが確実となったのです。

このことは出演したバンド仲間の共通の充実感と達成感になりました。その思いは観客の方々の胸にもひびき、会場はあたたかでやさしい空気で包まれました。私も心から感動し、涙ながらのお礼のあいさつとなりました。
 山岸さんも町民のやさしさに感激し、コンサートの最後に、上川町のために「大雪のように生きたい」というスケールの大きな曲をつくってプレゼントしてくれました。

中・高生をはじめとする各バンドが、たすきをつないでステージを務め、3年目で目標が達成された「水と命をつなぐコンサート」。嬉しさが爆発したメンバーたちの打ち上げのときの笑顔と言葉は、いまも忘れることができません。「まいにち仕事が終わったあと一生懸命に練習したんだもんね~」。

その後、山岸さんから「鎌田さん、井戸から出た水でウガンダの子どもたちにラーメンをつくって食べさせてあげてください」というメッセージをもらいました。
 まだ行ったことのない、会ったことのないチココ村の子どもたち…。北海道の4500人のこの小さな町から、遠く離れたアフリカ・ウガンダ共和国のチココ村に、わずかではありますが、好きな音楽を通して集まった井戸資金50万円を送ることができたことは、われわれにとってかけがえのない喜びです。子どもたちには一日も早くきれいでおいしい水を飲んでほしいと切に願っています。
 いつか、このコンサートに協力してくれたみんなと、ラーメンの材料を用意し、ギターを持って、「上川町大雪ふるさと音楽祭 寄贈」と書かれたチココ村の井戸を見に行こうと思っています。

これまで一緒に汗を流した 上川町のすてきな仲間に 乾杯!!
  そして、ありがとう。

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