熊本、名古屋、国立市、岩手、そして札幌、日本列島の南から北へ散らばるこの5つの都市で、今、それぞれの市民が同じ未踏の目標に向かって前進を続けている。日本、そしてアジアで初めてのフェアトレードタウンの実現である。
では、そもそもこのフェアトレードとは、そしてフェアトレードタウンとは何なのか?そして、この栄誉を獲得するのは、はたしてどの町なのか?
発展途上国の生産者の商品を公正な価格と条件で取引することにより、生産者の生活向上と、草の根からの貿易改革を目指す、世界的な運動としてのフェアトレードは、すでに70年近くの歴史を持つが、21世紀にはいって急速に世界で拡大している。フェアトレードは、グローバル化の進展に伴って国内外に広がった格差・貧困に対して、生産者と消費者を顔の見える関係で直接結んで人間としての暮らしを分かち合うことを目指す人々の希望とともに今も前進している。フェアトレードタウンもその試みの一つである。
フェアトレードタウンとは、ガースタングというイギリスの小さな町で始まり、イギリスのフェアトレード統括団体であるフェアトレード財団がこれを有効なキャンペーンとして認めて5つの目標(基準)を設定し、この基準を満たした自治体を「フェアトレードタウン」として承認するようになって、世界に拡大した。
5つの基準には、(1)自治体議会によるフェアトレード促進決議、(2)フェアトレード商品を置く・提供する一定の数の店舗・飲食店の存在、(3)自治体内の主な団体・組織・学校によるフェアトレードの推進、(4)メディアキャンペーンの展開、(5)自治体内にフェアトレード運営委員会を常設する、などがある。
第1号の町ガースタングが、ガーナのカカオ豆生産者の村と姉妹交流を結ぶなど、この基準を超えて自治体の市民と途上国の人々が直接結びつく画期的な試みをしている町も多い。これまで世界18カ国、ロンドン・ローマ・サンフランシスコといった大都市を含む600を超える自治体で、フェアトレードタウンを生む力となってきたのは、より公正で人間的な地球社会を自分たちで作りたいという市民の希望だった。
札幌は、これら国内5都市の中でも、とりわけ多くの一般市民がフェアトレードの普及にかかわっている。東チモールのコーヒー農民から無農薬・有機のコーヒーを輸入している北海道ピーストレード、バングラデシュの刺繍製作団体SDUWと連携する私たち北星フェアトレードなど、生産者と直接連携して活動している団体も数多い。ここ3年連続して大通り公園1丁目で開催されている、国内最大規模の屋外フェアトレードイベント、フェアトレードフェスタinさっぽろは、市民有志の実行委員が企画・運営している。
また、最近、札幌で創刊されたフリーペーパー、ザ・フェアビジョンは、日本初の市民の手によるフェアトレードフリーペーパーである。フェアトレードタウン実現を目指すネットワーク組織フェアトレード北海道も立ち上がった。
札幌には、未踏のルートを切り開くための実力が蓄積されつつある。知恵と力を、分かち合い重ねあい、自分たちの未来を切り開こう。