2006年(平成18)からアメリカの取材を始めたが、一昨年公開の「アメリカばんざい-crazy as usual」に続き、今年、劇場公開となる「アメリカ-戦争する国の人びと」、「ONE SHOT ONE KILL-兵士になるということ」で、私たちのアメリカ3部作がようやく完成した。
「ONE SHOT ONE KILL」は、アメリカ海兵隊のブートキャンプ(新兵訓練所)の12週間の訓練に密着し、高校を卒業したばかりの若者が、どのようにすれば戦場で人を殺せるようになるのか、新兵たちへのインタビューを折りませながら、卒業までの訓練の過程を追う1時間48分。
「アメリカ-戦争する国の人びと」は、私たちのアメリカ取材の決定版と言うべき作品だ。藤本幸久監督にとっても、「自身の最高傑作」になった。上映時間も堂々の8時間14分。全体は、8つの物語((1)高校、(2)イラク戦争、(3)戦死、(4)先住民、(5)見えない人々、(6)ベトナムの記憶、(7)抵抗、(8)それぞれの春)で構成され、ベトナムからイラクまで、戦争する国・アメリカの人びとの戦争体験が描かれる。
本格的な劇場公開を前に、昨年暮れ、この二つの作品の完成披露上映会を行った。12月15日の札幌での「ONE SHOT ONE KILL」には、350名の方々にご来場いただき、その多くは、20代の若者たちだった。12月26日、27日には江別市の「ドラマシアターども」で「アメリカ-戦争する国の人びと」を上映した。
200日のアメリカ取材を通じて、私たちが肌身に感じたことは、戦争や軍隊を支えるのは貧困だということだった。
いつの時代も、若者たちは夢を見る。いい仕事をしたい、認められたい、社会の役に立ちたい、世界を見たい……。しかし、アメリカでは、夢をかなえるために、大学卒業資格が必須だ。でも、大学に行くお金がなかったら…。軍隊へ行き、奨学金を得ることが、唯一、夢に近づく道に見えるのだ。
「ONE SHOT ONE KILL」に登場する新兵たちも、「可能性を試したい」「世界を見たい」「英語を学びたい」「大学へ行きたい」と、入隊の動機を語る。
彼らに自分自身を重ね合わせていたのだろう、多くの若い人たちが、映画を観ながら泣いていた。この映画を「自分の生徒たちにみせたい」と言ってくれた高校の先生がいた。就職も思い通りに行かず、映画の中の若者たちと同じ選択を強いられる生徒たちに、見て欲しいと言う。
しかし、新兵たちは、まだ人生のほんの入り口に立ったに過ぎない。未来を夢見て軍人を志した若者たちは、その後、どんな経験をし、どんな人生を歩むのか。それは、ぜひ、「アメリカ-戦争する国の人びと」(8時間14分)を観て欲しいと思っている。イラクやアフガニスタンに行った若者たちやその家族、ベトナムへ行ったかつての若者たち、路上に暮らす人たち、基地被害と闘う人たち、そして、戦争を拒否した兵士たち…。この映画には、私たちの見たアメリカの全てが詰まっている。
私たちの未来、日本とアメリカ・「日米同盟」の実像を知る手掛かり、マスコミが知らせない本当のアメリカが、この映画に、詰まっている。
この二つの作品は、2010年1月23日から沖縄・桜坂劇場を皮切りに、東京・ポレポレ東中野、大阪・第七芸術劇場、名古屋・名古屋シネマテークなどで順次劇場公開予定。
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