鳥たちの仲間には、人語をそっくり真似るものがいる。特に上手なのは九官鳥やオウム類であるが、オウムの中では、あまり美しくない「ヨウム」という鳥が一番うまいような気がする。最近では小型のボタンインコ類やセキセイインコも、よくお喋りすることがわかってきた。後者はオーストラリア原産であるが、原種がイギリス本国へ送られて以来、カラー・バラエティーに富んだ新種が固定され、それこそ花を見るような美しさである。
アメリカでは「スピーキング・バード」としてお喋りコンクールもある。
オウム類や九官鳥が、物真似をしても、そういった先入観があるので、相当こみ入った内容のお喋りでも、気味悪くも不思議にも感じないらしい。
今はペットブームである。わが家の猫や犬が、飼い主の顔を見た途端「ハハハ…」と笑い出したり、動物園の猿が見物人を指して「ウワッハッハー」と哄笑したら、どんなに心臓の強い人でも、まず顔色を変えるに違いない。人の生活環境に近い所にいる犬や描、外観のそれが、あまりにも人に似た狼たちが、笑ったり、人語を喋ってくれないのは幸せである。
鳥の中には「笑う鳥」がいる。有名なのはオーストラリアのフライカワセミで、少々割り引きして聞けば「ウワッハッハー」と聞ける。しかし、日本人の笑い方とは違う。バンは北海道でも繁殖するが湖沼、川辺の草間で「バンの笑い」を聞くことができる。ただし「クククク…」といった含み笑いである。ハクオウチョウ(白翁鳥)はインド、ビルマ地方の鳥だが、少々鳴き声が笑い声に近い。英国では昔から飼われ、ワライツグミ類に分類されている。中国、台湾などにいるハッカチョウ(八哥、鸚●〈〔偏〕谷〔旁〕鳥〉、八八鳥)は人語を真似る鳥として有名。本草綱目という本の中に「能作人言」とある。ポピュラーな鳥ではカラス、カケス、ムクドリなどがあり、ロンドン動物園の例の有名なカラスはWho are you!と喋ったという。
日本の政治家の中には、よく「二枚舌」だと言われる人がいるが、野鳥の世界には百枚舌の大物がいる。モズ(百舌)は、ほとんとの野鳥たちの声を真似る。私は毎年2~3回はモズにだまされている。