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1988年03月号/第25号  [ずいそう]    

版画ことはじめ
松見 八百造 (まつみ やおぞう ・ 版画家)

毎年のことながら、新年を迎えると年賀状のなかに百枚ほど手作りの版画が混っている。わたしが賀状を版画で作っているので、交換をかねてのあいさつなのでしょう。プロの版画家もいれば、素人の版画趣味もいます。版種は木版刷がいちばん多いが、銅版もあり、シルク印刷やプリントゴッコという最新の簡易印刷とさまざま。北見市にいる香川さんからは、薯版(いもはん)で美しい版画が届く。図柄は皆さん苦心しているとみえて、一見してどなたの作品かがわかり、まことに人さまざま、秀作で楽しい。

いまから35年ぐらい以前、わたしが賀状を木版ではがきに作り始めたのがきっかけで、木版画がおもしろくなり、版画の世界にのめり込むようになりました。

ところで、わたしの最初に作った賀状から現在に至るまで、アルバムにして保存している友人がいたのに驚きました。

そのころ、わたしが版画を習おうにも周りに版画の先生らしき人はなく、もっぱら版画の書物をあさり、教範として独りで勉強しました。

いま省みて、技法を覚えるのにむだな回り道をしたものと思います。しかし、苦心をかさねて覚えた技法は大切なもので、その成果は美術の公募展に出品し、落選したことがなく励みになりました。

版画が多色刷りで摺られるようになったのはいまから250年前ごろの話で、歌麿、北斎、広重とたくさんの町絵師(画工)が版下を描き、彫師(彫工)が版を彫り、摺師(摺工)が摺り、おのおの独立した職人で名人芸を競って浮世絵版画ができたわけで、現在の版画家と称する人はその技術には足下にも近寄れんことですね。いまは創作版画として、個性で絵を自由に作る時代なので、素人でもおもしろい絵を描き、版画を作って楽しもうではありませんか。

来年の干支(えと)は巳です。ことしは龍の図柄が多かったが、干支がへびになると、干支の絵はぐんと減るものと思っています。

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