本誌の読者には会社経営者もしくは管理者の方々も多いと聞いているため、最近の商法改正の動向のうち、主なものをお知らせします。
その改正動向をみると、有限責任である会社の社会的信用を高めながら、債権者がより安心して取引しうる態勢を醸成されることが期待されています。しかし、そのことが会社経営にどのような影響を及ぼすかを、よく考えていく必要があると思います。
●最低資本金制度の導入=これにより、株式会社では2000万円、有限会社では500万円に最低の資本金が引き上げられます。
現在、これ以下の会社は3年から10年のあいだに増資をする必要があります。さもないと、株式会社は有限、合資、合名会社に、また有限会杜は合資、合名会社に組織変更をしなければなりません。なお、この増資を容易にするため、準備金の資本組み入れ、現物出資などによる課税に対する優遇措置を法務省では大蔵省と協議中です。
●登記所での公開すべての会社に義務づけ=株式会社、有限会社は、すべて登記所で貸借対照表等を公開しなくてはなりません。だれでも5年間は決算内容を謄本のかたちで入手できます。
●公開しなければ取締役の責任追及=計算書類等の公開は、有限責任である会社の債権者保護のための不可欠の条件であるとされていますが、中小企業団体などは小規模法人などについてはこの公開の有用性に疑問を持ち、対応の困難性、事務的、経済的負担増などの問題を指摘しています。
●会計調査人による調査制度の創設=会社のみがその行為による責任を負う社員有限責任の会社である以上、計算の関係を明確にして、会社の財産がどのくらいあるか、その財産の運用が適正になされていることを保証する制度をつくるべきであるとし、株式会社は資本金3000万円、有限会社では資本金1億円以上(負債総額が3億円もしくは10億円を超える会社を含む)の会社は、この調査を強制的に義務づけられます。
●支配株主等の責任=支配株主等は、資本金5000万円未満の株式会社ならびに有限会社において2分の1以上の株式・出資口数を有する株主、社員のことをいいます。その株主、社員等が支配的地位にあったあいだの会社債務に関し、会社が弁済不能な場合、支払い責任を負わなければなりません。支配株主などの地位を失った後も、2年間はその責任は免がれません。
すでに法務省では、ことし3月に改正要綱案づくりを終わり、昭和64年春には国会上程の予定とのことです。