ウェブマガジン カムイミンタラ

1989年01月号/第30号  [ずいそう]    

Do you see the color?
合田 由紀子 (ごうだゆきこ ・ 札幌朗読奉仕会会長)

「スカーレット・オハラは美人というのではなかったが」から始まり、「目は、茶のすこしもまじらない淡碧(うすあお)で、こわくて黒いまつ毛が、星のようにそのまわりをふちどリ、それが目じりへきて心もちそりかえっていた。その上に、黒くて濃い眉が、ややつりあがりぎみに、マグノリアの花のような白い肌に、あざやかな斜線をひいていた。」―これは、私が視力障害者のかたのために、足かけ3年がかりで作製した録音テープ、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の冒頭の部分です。淡碧の目、星のようにふちどられた黒いまつ毛、黒い濃い眉、マグノリアの花のような白い肌、というように、たくさんの色をつかって、主人公のスカーレットを表現しています。

ミッチェルだけではありませんが、色の表現なしの小説や詩や文章は存在しません。盲人の友人に色の判別について聞いてみました。「僕は6年生の時に失明したから色の記憶はあるので、その記憶をたどって空想することが出来るけれど、人によって失明の度合、時期が、それぞれ違うから、色をどう判別するかは、他人(ひと)のことは皆目わからないんだよね」と言っていました。

この世にあふれた美しい色彩の数々を、そして、色彩によって受ける感動を表した文を、私が録音テープを作製する時に、どう声で表現してよいのか、いつも悩んでしまいます。ある視力障害者のお母さんは、子どもさんが失明すると知った時に、それまでにはと思って、出来るだけたくさんの色を記憶させたと聞きました。

5、6年前に出席した点字図書館会議で、アメリカの「Do you see the wind?」というタイトルの短編映画が上映されました。1人は晴眼者、1人は生まれながらの盲目者として生を受けた双子の兄弟の話で、自然の中におかれた2人が助け合って、光を、風を、鳥の鳴き声を、花の美しさを、幼いうちから共に感じて成長していくというプロセスを映画にしたものでした。私は感動して涙があふれたのです。

私たちの協力で、自然界にあふれた美しい色たちを視力障害者のかたがたに本当に見ていただけるとしたら、それは、私の一生の仕事なのです。

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