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1989年03月号/第31号  [ずいそう]    

お風呂さまざま
三井 さち子 (みつい さちこ ・ 札幌インテリアコーディネータークラブ)

日本人の風呂好きは世界一といわれる。高温多湿な気候と綺麗(きれい)好きがそうさせたのであろう。ゆったりと湯舟につかっていると気分がほぐれ、日中のストレスが解消される。

昨年の秋、「ピさん湯かげんは」「ただいま40度、ベリグットョ」とかいう浴室とキチンで中年過ぎの男性がバストークなる商品で交信するTVコマーシャルがあった。あの一連のCMは入浴に付加価値をつける商品の開発と販売で大変な実績を上げている会社のものだそうだが、実は私はあの二枚目半の役者と社長のやりとりの調子の良さで、苦にならないCMというよりは、むしろ楽しんで見ていたものだ。

現在ではほとんどの住宅に浴室があり、公衆浴場の数が減少している。

札幌のすすきのに昨年オープンしたビルの2、3、4階を使って入浴と宴会をすることのできる高級ヘルスセンターとでもいえそうな贅沢(ぜいたく)なインテリアのものがある。レモン風呂、気泡風呂、露天風呂、サウナ、シャワーマッサージ等々、入浴者のニーズに対応できる仕組みになっている。

なかでも露天風呂は床と壁が石材、浴槽はヒノキでもちろん屋根も天井もなく、四方の外壁に切り取られた空からは折しも雪が舞い降りてきて、湯舟につかりながらながめる雪の風情は独特のものがあり、街中の冬の露天風呂を味わった。

しかし、この社交場の浴室は、私が子どものころに行った壁に富士山の絵のあるお風呂屋さんとはかなり趣が変わっていて、入浴している人それぞれが孤独に見えたのは私だけだろうか。

今ではテレビドラマでしか見ることができなくなってしまったが、風呂の炊き口で薪をくべる人と入浴する人の窓越しの対話が防水トランシーバーに変わり、ホームオートメーションによって浴槽にお湯を張ったり、浴槽の湯を沸かすのも外出先からできる時代だ。総ヒノキの浴室に人気が集まリ、自宅で温泉気分の味わえる日本各地の温泉入浴剤が販売されたりと、実に多種多様な入浴が楽しめるようになったのはいずれにしてもうれしいが、より心あたたまる入浴ができればと思うこのごろだ。

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