ウェブマガジン カムイミンタラ

1990年03月号/第37号  [ずいそう]    

コスタリカクラブ
蓮池 悦子 (はすいけ えつこ ・ 金成マツノート研究者)

長い間「夢」が持てなくて困っていた。

原則として、しないで済むことはしないで済ませたかった。基本的には自分に忠実なスタイルを選択して生きてきた結果の47歳、シングル。

だいたい二足のワラジが好きなのだ。一足目は、食べるための糧=職業。二足目が日々に張りを与えるための「夢」。

20代の二足目は、絵であり童話であった。これは、30代最後に1冊の著作となって自己実現した。20代は、田舎に家を持って有機肥料・無農薬野菜栽培。晴耕雨読の10年間に「金成マツノート」のユーカラ翻訳用辞書を編集して、そもそも東京からの移住理由であった金成ノートの研究に専念できる目処がついた。そこで再び自分に属する文化の享受と知的刺激を求めて、40代からのサッポロ生活。

ムラでの10年間、1ヵ月2万5千円で暮らしていた。二足のワラジが一足になってしまった。「夢」が見つからなくなっていた。

ニホン国において、シングルウィメンの老後はどうも愉しくない。そんなときコスタリカという国が、世界のリタイア老人立国を日指しているという報道に接した。銀行に1800万円積むのが条件だという。利子は1割。年間180万円で十分暮らせるそうだ。3寝室ある家も800万円で手に入るとか。

そういえば、外国で暮らしてみたかったっけ。シングルたちと共同生活もしてみたかった。安定したリタイア生活を早く実現して、「社会参加」に行動意欲を持ちたかった。なんだ、やってみたい「夢」はまだ残っていたのだ。そこで46歳の昨年、ひそかに「コスタリカクラブ」なるものを旗揚げした。

56歳までの自分を「夢」実現のために鍛える。ニホン語やニホン文化を他者の目で考える…。実は今、ユーカラの人称と「共同体」意識に興味を持っている。他者意識の有無が「生きのびる」ことにかかわりがあると。

大学再入学の夢に代えて、昨年4月から朝日カルチャーで3講座受講している。ターゲットは10年後。誰かごの指に止まる人はいない?

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