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1991年05月号/第44号  [ずいそう]    

うるおいのある街づくりの一助に
吉木 隆 (よしき たかし ・ 北海道建築士会札幌支部理事)

毎朝配達される新聞の、マンション戸建て住宅の折り込み広告の多さ、紙面の5段抜きの広告や全面広告まで、手をかえ品をかえての宣伝攻勢。これから住宅を持とうという人の購買意欲をかき立てる文面を、どれだけ冷静に見抜けられるだろうか。価格もずいぶんと高額な物件も出回っているし、ああ、こんなに多くの情報が氾濫していては、私のような建築の仕事に身を置く者でも、選択するのにずいぶんと苦労します。購買者は何を基準にマイホームを選択しているのか気にかかります。結局のところ、どのくらいの資金調達ができるかどうかで購入物件が決まってしまうのか。購入までいろいろと夢の風船を大きく膨らませるが、現実に戻るとスーツと小さくしぼんでしまう。

札幌の住宅地も年々郊外に広がり、今まで多くの樹木が繁っていた所が、数ヵ月も訪れずにいると様相が一変していることが幾度となくあり、さびしい思いをすることがあります。開発と自然保護、相反するこの行為を、私自身、なにか割り切れない思いがいつもあります。

私が所属する建築士会札幌支部の同じ建築業界に身を置く仲間が、十数年かかってまとめあげた「変わりゆくサッポロ」の冊子は、より良い環境の住宅と住宅地を目指すために、建築にたずさわる私たちが率先して動くための参考となればと、一昨年末に発刊しました。この冊子には、私たち建築士の自戒がこめられております。

うるおいのある街並づくりと、北海道のすばらしい四季と自然を一年中楽しめるような住まい方が、ほんの少しの周囲に対する気遣いにより実現できます。家を一軒建てるのに費やす労力も資金も、たいへんなものです。また、健全な状態を維持することもです。建ってしまったら何も残らなかったなんて、さびしいではありませんか。十年後、二十年後の街を考え、庭に木や花を植えるというような街の調和に気配りすることが、やがて住んでよかったと愛着がわく、誇れる街並の実現へと実を結ぶことと思います。

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