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1992年05月号/第50号  [ずいそう]    

竹のこだわり
野坂 広子 (のさかひろこ ・ 旭川市民オペラ研究会代表)

今年、旭川市民オペラは3回目を終えました。1月11日・12日の2日にわたる、オペラ「竹取物語」の公演です。札幌の作曲家木村雅信氏作曲のオリジナル初演です。旭川で、初演オリジナルのオペラができるとは、4年前には夢としか思われなかったことでした。36万人の地方都市で、夢が実現していっている素晴らしさ、市民パワーを感じます。

オペラを創る人達は、旭川を中心とした北海道の住民、そしてオペラを支える観客は、“オペラ”に全く縁のなかったといえる地方都市旭川の市民です。創る側の私たちは、オペラがこれほど、市民に受け入れられるとは、最初のうち考えられないことだったのです。これは、オペラを創ろうとする、スタッフの思い入れが観客に伝わっていった結果ともいえるのではないか、とこの頃考えています。

川名征一さんは、知る人ぞ知る、オペラ舞台美術家です。彼のようなプロが、非常に強いこだわりを持って旭川のオペラの初めから参加して下さったのは、大変幸運なことでした。今年の「竹取物語」で彼は、ほんものの竹にこだわりました。他の舞台スタッフの猛反対をおしてです。反対の理由はいくつもありました。手に入れにくい、運搬費用、竹は舞台にどうやってたてるのか、竹がたたなければ、演出も照明も最終的にきまらない等々。しかし、断固、竹でした。そして、結果はお客様の素晴らしい拍手。ほんものの竹をみたことがない地元の子供たちが、竹にさわりたいと舞台裏までやってきました。川名さんをはじめ、皆だきあって喜んだのでした。

川名さんが3月末に急死された時、私の目には、あの美しかった竹の舞台がみえたような気がします。そしてかぐや姫が、白い階段を登ってひとすじの光の中に消えてゆくフィナーレ。俺が支えているんだ、と強烈な誇りをもっていて下さった旭川市民オペラの舞台の中に、彼の細身の姿がオーヴァーラップされます。私たちのオペラの前途は厳しいものがありますが、竹のこだわりの気持を大切にして前を向いてゆくことでしょう。

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