どうも“山岳ガイド”という言葉はピンとこない。そもそも北海道にガイドを必要とする山があるのだろうか。日高山脈や利尻山、あるいは知床連山や芦別岳にしろ、登る気になれば路はある。もっとも、バリエーションルートを狙うのであれば別だが、そんな登山者は少ない。
8年前、私は登山で飯を食ってやろうと真剣に考えてみた。考えた末に「そうだ、ガイドではなく、登山のお手伝い業なら、なんとかなるかも」となった。早速、山仲間に「おれは、北海道アルパイン・サービスをひらく」と相談した。
「なな、頭文字からHAS=ハズ=となるだろう。これは儲かるハズだろうが」
「ばか、最後には、こんなハズではなかった…となるぞ、おまえ」。
以来、登山アシスト業と称して、多くのお客さんと山々を歩いている。聞くところによると、アメリカ・モンタナ州には私設の「アウト・フィッターズ・スクール」がある。ここでは、野外スポーツのインストラクターを養成している。マウント・クライミングはもとより、ハンティング、スイミング、ホース・ライディング(乗馬)、フィッシング、バード(あるいはアニマル)ウォッチングなどを通じて、自然と人をフィット(引きあわせること)させる人をアウト・フィッターと呼んでいる。
最近の旅行の形態が単なる観光から、直接実行しながら旅をする方向に変わりつつあるのではないだろうか。そうなれば、ますます質の良い“アウト・フィッター”が必要になってくるのではないだろうか。
―などと将来への夢は抱きながらも、現実はともすれば“こんなハズでは…”に傾きがちである。そのつど、夢(目標)は絶対に捨てないと思い直すことにしている。