ウェブマガジン カムイミンタラ

1992年07月号/第51号  [ずいそう]    

虫と子供達
松田 まゆみ (まつだまゆみ ・ ひがし大雪博物館友の会)

最近、昆虫採集復権という言葉を時折耳にする。「かわいそう」とか「採集より観察を」ということで、この頃では子供の昆虫採集はかげを潜めている。さらに、受験戦争の波が小学生にまで及ぶようになり、外で遊ぶ子はめっきり減った。

しかし、種の保護を考える限り、子供が虫を採ったからといって数が目に見えて減るほど、虫は脆弱な生きものではなく、大規模な開発のほうがはるかに影響が大きい。子供が虫を採るという行為を通して、自然についての正しい認識を深めれば、やがて自然を守る原動力になるのではなかろうか。

このような採集復権を唱える人びとの意見に、私も基本的には賛成だ。幼い頃から虫を友として過ごし、今でも虫(クモ)と関わって暮らしている私には、子供の頃の虫採りの体験こそが、今の自分の土台になっていると身をもって感じているからだ。しかし、今の子供達の姿を見ていると、一体この子達にどうやって虫採りをさせたらいいのだろうか、と根本的なところで戸惑ってしまう。

一昨年の夏、地元の子供達に昆虫採集をさせたことがある。真新しい捕虫網をめちゃくちゃにふりまわし、ようやく虫を捕まえると、大声で大人を呼ぶのである。チョウやバッタを手でつかんでカゴに入れることができないのだ。その後、釣りに挑戦したが、こんどはつり針に餌の川虫をつけられないのである。

3月のある日、我が家に遊びに来ていた4、5歳の女の子達が、黒地に赤い斑点のあるテントウ虫を見つけ「毒テントウムシだから外に出して」と騒いでいる。もちろん、自分ではさわれない。まるで悪者を退治しろと言わんばかりだ。

この子達の虫に対する感覚は、まわりの大人達に培われてきたに違いない。とすれば、大人達も子供に混じって虫採りをしてもらったほうが良いのでは、と思ってしまう。

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