ウェブマガジン カムイミンタラ

1992年09月号/第52号  [ずいそう]    

壁のスイッチ
鮫島 和子 (さめじまかずこ ・ 札幌学院大学教授、日本消費者教育学会北海道支部長)

10余年前に入居した家の壁につけられている電灯のスイッチが壊れた。スプリングが折れて、切り替ができなくなってしまったのだ。10年以上も使ったのだから、寿命がきたのだろう。スイッチの部品だけ取り替えればよいのだからと、あちこち探してみたが、同じ型式のものは市販されていなかった。

建物のアフターサービスをしている会社に電話して、業者の紹介を依頼した。「業者が行きますから」とのことで3日待ったが、何の音沙汰もないので再度サービス会社に電話したら、その日のうちに来てくれた。業者いわく「モデルチェンジされてしまって、これと同じものはありませんから、全部取り替えになります」。全部取り替えるのなら、近くの日曜大工の店で買っても同じだと思い、再検討することにした。

それにしても、使い捨ての生活を問い直そうと、ようやく消費者が自覚しはじめ、企業も環境のこと考えて、廃棄段階まで気配りしなければ生き残れないとまで言われはじめているのに、大手メーカーが修理用の部品までなくすとは信じられないと思って、メーカーのお客さまご相談センターに電話してみた。壁のことならと、問い合わせ先の電話番号を教えてくださった。

その番号に問い合わせてみたら、丁寧に古いカタログを探して「その製品は製造中止になっていますが、部品はあります。でも、ここでは小売りをしていませんので販売店を通してください」とのことであった。

こんどは、取り扱っている販売店探し。在庫があるという修理業者を見つけて、急いで買いに走った。「素人が修理するのは危険だから、部品だけは売りません」という業者を説得し、部品を2個だけ手に入れた。壊れた部品と同一のものではなかったので、少し修理に手間どったが、修理は完了した。かくして、暗闇の部屋に3日ぶりで明りがともった。

ゴミをださないための努力とは、まことに手間のかかるものである。しかし、これが責任ある消費者の行動なのだとも思う。

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