ウェブマガジン カムイミンタラ

1993年05月号/第56号  [ずいそう]    

酒の話
山崎 達郎 (やまざきたつろう ・ 日本バーテンダー協会連合会顧問)

世界中に、酒の種類は数え切れないほどたくさんありますが、製法上からいえば醸造酒(発酵させただけの酒)、蒸留酒、そして混成酒の3つに分類でき、それ以外の手段で造る酒というものは存在しません。蒸留酒は醸造酒を蒸留したもので、ワインを蒸留するとブランデーになり、ビールはウィスキーに、清酒は純米焼酎に、といったように変化しますが、さらに何回も蒸留を繰り返していくと、ついには全部純粋のアルコールになり、元の材料が何であったかの区別はつかなくなります。

人間も、何回も生まれ変わりを繰り返していくうちにだんだん不純なものが取り除かれ、ついには完全無欠の人間となって、もうAさん、Bさん、Cさんの区別はつかない。みんな神の如き者になってしまえば、ふたたび人間に生まれ変わる必要は無くなるのではなかろうか、と考えたりします。

醸造酒または蒸留酒に果汁や砂糖、草根木皮のエキスを加えて出来たものが混成酒で、リキュール、ベルモット、養命酒がそれです。カクテルも、混ぜて作るという点では似ていますが、飲む際に混ぜるという点が違います。カクテルは、いちおう処方が決められておりますが、個人の好み、体調、直前に飲食したものによって、多少変える必要があるからです。

「カクテル」とは「雄鶏の尾」という英語ですから、世界各国のバーテンダー協会のバッジやペナントなどに雄鶏をデザインしたものが多く使われておりますが、直接には何の関係もありません。たぶんイギリスからの移民が、原住民の飲んでいる、混ぜた飲み物をコクテールに似た呼び方をしていたので、身近なもので代用したものと思われます。サトホロペツ(乾いた広い川)が「札幌」になったようなものです。

シェーカーの振り方ひとつで味が変わるなどとよく言われますが、材料が適切で、混ぜる割合が適切なら良いカクテルが出来ます。素人でも、時間をかけて自分の好みの割合を見つけるようにすれば、玄人以上のものが出来ます。

プロとアマの違いは応用が効くかどうかで、処方箋を見ただけで出来上がった状態をイメージ出来る能力の差だけがプロとアマの違いであろうと思います。

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