ウェブマガジン カムイミンタラ

1993年07月号/第57号  [ずいそう]    

函館観光の両柱
フィリップ・グロード (ふぃりっぷぐろーど ・ 旭ヶ岡の家 神父)

函館は、近年、ますます本格的な観光の街になりつつある。観光資源は数多くあるが、とくに全国的にも有名な函館山から見る夜景と、歴史的価値のある五稜郭は、函館観光の両柱である。その五稜郭公園について一言申し上げる。

五稜郭は、ヨーロッパで17世紀から19世紀半ばころまではやっていたボーバン型の要塞で、堀の周囲は約3キロメートル、幅は30メートル、深さ約3メートルである。公園の桜は見事であり、5月中旬の五稜郭まつりとか、7月後半から8月半ばまでの10回公演をつづける函館野外劇も話題をよんでいる。

私は日本にきてから40年、最初から五稜郭公園は堀の上に水上舞台を浮かばせて、ヨーロッパでも人気のあるソンエルミエールという光と音の夜のショーにふさわしいロケーションだなと思っていた。念願かなって、6年前から函館野外劇がスタートした。出演者も約500人、大道具、小道具、衣装を担当する者もみんなボランティアである。

7月末から毎週金・土・日曜日を公演日にして、8月半ばころまで10回公演をくり返している。なかなか幻想的で、道南の歴史やドラマやロマンをおこし、また北海道の将来をいざなう感動的なスペクタクルである。子どもからお年寄りまで参加し、去年は横路知事の参加、また渡島支庁、函館市の役人も出演して、ハダカのつきあいの新しい祭りでもある。

函館野外劇は、おととし、国土庁長官賞をいただき、ことしはサントリー賞もいただいた。歴史をテーマにするスペクタクルであるから、生涯学習としても高く評価されているわけである。また、函館野外劇がボランティアスクールであると思っている。

みんなで大きなスペクタクルを構成するというのは、参加者のふだん発揮しえない、その自分の生活の流れ以外のもっている能力を表面化させ、伸ばしうるチャンスだといえる。さらに、こういう活動は現代人の秒きざみの生活の中のストレス解消にもなり、人間性の原点を再認識するきっかけにもなっていると思う。五稜郭という日本でもユニークな舞台を背景に、函館にしかない大きな、しかも愉快な夢は実現しつつある。

夏に、ぜひ函館野外劇を見なきゃ。1回見て、次の日、出演できるよ。みなさんのおいでを待っている。

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