ウェブマガジン カムイミンタラ

1994年03月号/第61号  [ずいそう]    

外来米
荒井 恵美子 (あらい えみこ ・ 料理研究家)

美味求心・グルメ番組のテレビを横目に、歳暮のひと日「輸入米」を使って、米料理の試作十数種のため徹夜。翌日、北海道新聞生活部の記者4人の、忌憚(きたん)のない評価の試食が始まった。「白飯、海苔巻き、いなりずし、白粥」の中粒ジャポネ種の「カリフォルニア米」、これはいけると食が進む。さて「とろろ、カレーソース、チキンフリカッセ」をとろりとかけた、長粒在来種の「タイ米」の「白飯」は熱ければ食べて食べられるが、人肌に冷めたころより、ポロポロと情けない。

私などは戦後「外米」の熱いごはんに、生卵をかけて無理に押し込んだ想い出、あのころは「おかず」も貧しかった日本。乏しい食生活の歴史を越えて、「銀シャリ」の白い「ごはん」。この憧れを手に入れ、幸せだったことが、今、崩れようとしているのに、不思議と飢餓感がないのは、和、洋、中華の麺食も一日一回の割りでとっていること。おいしい「おかず」もたくさん食べられて、「ごはん」少食時代の国民が多くなっていることで救われています。

うちの子は「ごはん」を食べなくてと嘆いていた母親も、かえって明るく割りきり、パラパラしたねばりのない「外米」の性質を逆手にとって、食材のひとつと理解し、子供の好きなピラフ、グラタン、プディングなど、スパイスを効かせたエスニック風など、工夫と新しい「米料理」の発見とレシピをみんなで開発するべきです。

日本の米は口に馴染み、たしかに漬物と味噌汁だけでも美味しい。大事に伝承し、作り続ける大切な「ブランド日本米」だと信じます。まずい、まずいという「タイ米」を食べるたびごと、熱々に作って、タイ人の多くの家族が食べて働いていることを忘れてはいけない。「粉食」にも目をむけ、実だくさんの「すいとん」など新しい感覚でとり入れるセンスも必要で、米の不作を乗りきって、今年の秋以後の豊作を心より願いましょう。

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