ウェブマガジン カムイミンタラ

1994年09月号/第64号  [ずいそう]    

本の下敷き
西野 鷹志 (にしの たかし ・ 函館山口ープウェイ(株)社長)

ぐらっと来た。さらに、ぐらぐらと大きく、永く揺れが続いた。昨年夏の北海道南西沖地震の際のことだ。我がベッドサイドに乱雑に積み上げた400冊余りの本の山は、5~6冊滑り落ちただけで、ほとんど無傷。なぜ、崩れなかったのか、いまだにわからない。高さで40冊ほどが横積みにされた山が10列つながって、偶然にも軟構造となって、耐震性が高かったのかもしれない。それとも、本のジャンルが目茶苦茶なので、うまく補完補強されて崩れなかった――これは冗談。

ボケ防止で、最近始めた写真。もっぱらクラシックカメラで失敗作を撮りまくり、家計圧迫だと、家内は文句たらたら。ストレス解消と下半身強化に一石二鳥と、10年以上続いているスキー。これが、ぼくの2大趣味。が、最も我が人生で永く続いているのが、本をやたらと買いまくることだ。学生時代からで、年季が入っている。置き場所に窮すると、昔なら一挙に古本屋行きだ。古本屋が減り、古本が売れにくいご時世で、ただで引き取ってもらうか、古紙交換に出すしかない。

本の山の中から実際に読むのは、せいぜい1割。典型的な“積ん読書家”だ。読み方も、枕の横に並べた5~6冊の中から気分と眠気具合で選び、同時進行させる。むかしは推理・スパイものを好んだが、アトランダム・同時進行型の現在では、筋を丹念に追わなければならない分野は、敬遠気味。

今、読んでいるのは、堀田善衛『ゴヤ』、バイロン詩集、檀一雄『来る日、去る日』、永井荷風『ふらんす物語』、『地球の歩き方・ポルトガル編』。ぼくの頭の中身と同じで、何だかわからない組み合わせだ。

昨年の大地震のあとも、本の山はさらに高くなっている。500冊くらいだ。ベッドに寝ころぶと、山は頭より30センチも高い。こんど大きく揺れたら、その時こそ、ぼくは本の山の下敷きだろう。“積ん読書家”として本望だ。でも、大地震は100年に一度だそうだから、当分は安心か。

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