道内を旅行することが多い。商売柄、年に100日以上になり、行先も多方面にわたる。出かける度に北海道の景色は雄大だと今さらのように思う。これは雄大さが日本一だからであろう。千歳から飛行機で道東にむかうと、日高山脈をはさんで様相が一変する。山脈の西には150万都市の札幌があり、東には牧歌的な十勝平野が広々と開けている。万葉の歌人がこれをみたら、さぞや雄大な詩をものしたことだろう。
歌人は感動を詩に託して多くの人に伝える。しかし、歌人になれる人は少ない。大多数の人はどうするだろうか。人は感動するとそれを誰かに話したくなる。人が話す場合最低3人に伝えるといわれる。その話に感動した人がさらに少なくとも3人に話す。それを聞いた人が「また聞き」として伝える。かくして、感動は最低40人にくちコミで広がる。北海道の景色の雄大さに打たれた観光客もこうして感動を伝えているにちがいない。
人が何かに感動するのは今までに遭遇したものの中でそれが一番だからである。しかし、こまったことに人は悪い意味でも感動する。旅先で悪印象を受けると同様に伝わってしまう。悪事千里を走るの諺のとおりである。
幸い、冬の北海道には、雪祭り、氷祭り、流氷、冬の味覚など、一番とおぼしきものが多い。
そうだからであろうか、冬に旅行をするとしたら行く先は北海道と考えている九州の人は極めて多い。何か魅力を感じてそう考えているのだろうか。やはり、冬の北海道が幻想的で鮮やかな印象を一番強く与えてくれると期待しているからであろう。
雪や氷などの自然だけでなく、冬の味覚にも感動してほしいものである。
おいしいものをあげてみよう。冬が旬の魚介にハタハタ、ヤリイカ、鮭のルイベなどがあり、数えあげればきりがない。肉はサフォーク種の羊、イノブタ、合鴨が良い。酒はワイン・アイランドといわれるほど豊富だ。焼酎もいける。これらはうまいばかりでなく、観光客には珍しいものでもある。このところ、多くの食べ物が一村一品運動でみがきがかけられつつあるのは心強い。景色はナンバーワンだが、味覚もナンバーワンになって、観光客に好きになってもらい、感動が広く伝わっていってほしい。
北海道に行きたいと考えるのは、そこにきっとナンバーワンがあり、それに接することができると期待しているからにほかならない。この期待に応えたいではないか。
人は一番をみたいのである。一番に感激し、感動したいのである。