ウェブマガジン カムイミンタラ

1997年09月号/第82号  [ずいそう]    

超我の奉仕
西條 正博 (さいじょう まさひろ ・ 国際ロータリー第2510地区パストガバナー)

作家の池波正太郎は、あるところで次のように語ったそうである。

「男らしさとか女らしさとかいう前にね、男も女も共通して大事なことがあるんだよ。『人の身になって考える』ということがね…。これがなかなか、口でいうのはやさしいが、できないことなんだけどね」。

孔子の弟子、子貢が「一言にして以て身を終うるまで之を行うべき者ありや」と質問したところ、孔子は「其(そ)れ恕(じょ)か」と答えた。

「一生を通じてもつべきものをひとことで言うならば、それは思いやりの心(恕)であろう。自分がしたくないこと、されたくないことは、人にもさせることなく、また、しかけるべきものでもない」。

ロータリー・クラブが創立されて92年、その連合体を国際ロータリーというが、全世界の155カ国に、2万8千のクラブ、120万人の会員を擁し、世に謂う奉仕団体の嚆矢(こうし)として知られている。その標語は“超我の奉仕”といい、自らの職業倫理向上を行動の出発点としている。

しかし、善いことをしようとすることは、なかなか難しく、勇気が要ることだ。栃木県宇都宮市立富士見小学校6年生、半田由美子さんの「失敗から学ぶ」と題した作文の一部を紹介しよう。

「それは今年の春のころでした。友達とバスに乗っていました。こんでいて、席につけたわたしたちは、とても運が良かったのです。しかし目の前を見ていると、立っている人がたくさんいました。その中には、おばあさんが人ごみの中に立っていました。わたしは席をゆずろうと思うのですが、うまく言葉にならず、うつ向いていました。そのうちに、おばあさんは、降りてしまいました。その後ろ姿を見ると、心に何か重いものが乗っかったような気がしました」。

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