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1997年09月号/第82号  [ずいそう]    

茶碗洗い
丹羽 祐而 (にわ ゆうじ ・ (株)クリエイティブ・コア代表取締役)

趣味はと問われれば、たまに茶碗(ちゃわん)洗いと答えている。生活上のことから、子どもの頃より台所に立つことが多かったのであるが、それがいつの間にか趣味の領域に入ってしまったようである。継続は力とよくいわれるが、まさにその力によるものであろう。

この茶碗洗いのことは、別に自慢するような内容ではないのであるが、PTA現役時代に、家庭教育がらみのお茶飲み話として活用したわが家の日常生活の1コマが、時間の経過とともに尾ひれはひれがつき、あちこちに出没し始めたのである。また、時折、茶碗洗いをテーマに講演をという依頼まで舞い込むことになったのである。

さて、必要にせまられての洗い業であるが、生活の変化により、実施しなくてもよい時代も若干存在した。いわゆる結婚を境にである。だが、夫婦間の日常のパワーバランスから、いつしか台所仕事の一部の洗い業の項目がリターンしてきたのである。ただ、潜在的にもその仕事が好きであったのか、ほとんど苦痛には思わなかったのだ。それどころか近ごろは、多少誇張した表現になるが、洗うという行為のあとに、必ずある種の快感が得られるようになったのである。

よく、どの道も時間をかけ探究すると、その道の奥が見えてくると聞くことがあるが、私の茶碗洗い道も、その段階に入ったのであろうか。恐らく。

7月1日は、私の54歳の誕生日。数こそ少ないがプレゼントももらった。パワーバランスのうえでいっそう強くなった家人からは、同日、病院で行った自己の検診結果の良好なことを、また会社のスタッフからは大きなデザインエプロンをプレゼントされたのだ。良い結果とエプロンという性格の異なる2つの贈り物であるが、どちらももらって嬉しいものであった。

それから約1カ月が過ぎたこの頃、なにか物足りなさを感じ、家人に現物のプレゼントも欲しいと幾度か要求しているのだ。それも台所関連以外の物を、と。

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