ウェブマガジン カムイミンタラ

1999年01月号/第90号  [ずいそう]    

森の仲間に思いを寄せて
高野 美代子 (たかの みよこ ・ 写真家)

人口180万都市・サッポロを見おろすようにある藻岩山の懐に抱かれて、18年になる。この森は開拓使時代から保護され、国の天然記念物にも指定されている。私はこの森を歩くのが大好きだ。四季折々に、動植物が優しく語りかけてくれる。しかし2、3日前まで迎えてくれた可愛い花々が根こそぎ無くなっていることがある。こんな時は、がっかりしてしまう。野の花は、野にあるほうが美しくて可愛らしいのにと思う。

エゾリスに出合ったのもこの森だ。以来、10年にもなろうか、雨の日も雪の日も飽くことなく彼らとの語らいが続いている。

かつてエゾリスは木鼠といわれ、木をだめにする悪い動物だと思われていたようだ。

「とんでもない!」彼らは森の植木屋さんなのだ。秋、木の実がたわわに実ると、冬に備えて蓄える。それらは自分だけのものではない。同じ森に棲む動物たちの共有の食料になる。それも、全部食べ尽くすとは限らない。忘れられたものは、翌年の春、若木となって顔を出す。そして、長い年月を経て、その時代に生きるものの餌となり、住み処になり、美しい森をつくり続けることにもつながっている。

ドングリやオニグルミの種子は、自力で母樹から遠く離れることができない。リスたちの働きによって遠く運ばれ、地中に埋められることで発芽できる。小さなからだで、休む暇もなく木の実をくわえて行ったり来たりする姿を見て、その愛らしさに頬がゆるむ。都会の喧騒の中で毎日を過ごしている人びとに見せてあげたい。

北の森の四季の移り変わりは、格別の思いを抱かせる。たまに、森林浴と洒落てみてはいかがだろう。その美しさと、可愛らしい動物たちとの思いがけない出合いがあったりして、きっと心和むに違いない。

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