旅のほとんどが仕事がらみであるが、私にとって今回の旅はアメリカ発見の旅であったように思える。今年の3月、調査と学会参加を兼ねてニューヨークに1週間ほど滞在した。1985年以来、3度目のニューヨーク訪問となった。
雪はないものの、風が冷たく手袋なしに歩けないような寒さであったが、好天気にはめぐまれた。メトロカードの1日乗車券を購入して、地図を片手にいくつかの大学を訪れた。10年ほど前のニューヨークと比べて、ホームレスも目にすることなく町全体が非常にきれいになっていた。また、地下鉄の入り口、街角、大学構内、いたるところに2~3人の警官がたっていて、1人で地下鉄にのっても不安は感じなかった。街を歩いていても、東京とさほど変わらないという印象をうけた。現市長になってからの変化だときかされ、ずいぶん変わったアメリカの行政力に驚いた。
ニューヨークのいくつかの高等教育機関の担当者から、インターンシッププログラムの紹介をしてもらった。大学と企業の連帯を推進する高等教育の合理性と実践力、企業が大学を受け入れる柔軟な包容力を感じた。また、ニューヨークに限らず、アメリカでは昼間のクラスのほか、夜間、週末や休暇中の集中講座、移動キャンパス、インターネット講座など様々な形態で高等教育が多くの人々に提供されていることが多い。同時に、学力劣等学生への猶予期間付き退学警告や優秀学生に対する奨学金ほかの特典授与など、教育の質管理での規制と育成がされている社会でもある。
19世紀後半、多くの移民を受け入れたエリス島で、当時の記録映画をみ(る機会に恵まれ)た。自由を求めて移民した人々を受け入れた包容力のあるアメリカ。審査を通過した者のみを入国させた規制するアメリカ。受け入れ移民の努力をしっかりと受け止め、評価育生してきたアメリカがあった。この映画を見たとき、今回の旅で感じていたアメリカ社会のイメージがここにもあったと歴史の重みを感じた。