ウェブマガジン カムイミンタラ

1999年07月号/第93号  [ずいそう]    

野鳥病
住友 順子 (すみとも じゅんこ ・ 日本野鳥の会札幌支部)

数年前から、私にはこの傾向が現れ始めました。何が、というと、映画、テレビ、コマーシャルなどで流れる野鳥の声が気にかかる病なんです。ある時、友人と映画を見ていて、題名も内容もすべて忘れてしまいましたが、画面から流れる野鳥の声が、どれも背景(環境)とは場違いなのに気づきました。そのことを友人にそっと告げると、呆れた顔で「それは“野鳥病”ですね」。映画を楽しんでいた友人には、迷惑なことであったかもしれないが、思いがけない一言に、自分に感心してしまいました。

そのころの私は野鳥の姿を追うだけではなく、行動や声(囀(さえず)り)などにも一段と興味を広げていった時期と重なっていたのでした。その後、この病とはずーっと付き合っているのですが、洋画では、幸か不幸か、海外の野鳥の声を聴くチャンスをもたず、知らずに見ています。

でも、このごろはこの病にも少し快感を覚えているようにも思えます。

昨年見た映画では、北海道が舞台の『学校II』の中で、雪原で熱気球に乗せてもらうシーンで「ジョッピンカケタカ テッペンハゲタカ」とエゾセンニュー(ウグイスの仲間)の声が流れたときには、思わず絶句してしまいました。たしかに北海道を代表する野鳥ではあるが、冬は東南アジアが越冬地となっているはず。起用にあたってどんな経緯があったのか、ストーリーそっちのけで悩む私です。

最近では、NHK朝のテレビ小説「すずらん」を見ていると、ハシブトガラの声(ツーチチチィー)が何回か使われています。明日萌(あしもえ)駅を中心にした住宅地の環境に森林性の野鳥はちょっと? と思っていましたが、でも、このごろはスズメやヒヨドリも登場し、病からは解放されています。

知らなければかからず、その世界を知ったばかりにかかる病。いつも私は「身近な自然に、野鳥に目を向けましょう」などと言っているが、同病者を増やしていることにもなるのだろうか。

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