ウェブマガジン カムイミンタラ

2000年03月号/第97号  [ずいそう]    

湯けむり外交
野呂 美加 (のろ みか ・ チェルノブイリへのかけはし事務局長)

「クスクス」と笑ってしまったのは、私だけだろうか。ロシア船員がマナーを守らないから、外国人いっさい立ち入り禁止の浴場があるという。身体中、せっけんの泡だらけで湯船にとびこんでいるという。

愛するロシア民族よ。またやってくれたか。

私たちは、チェルノブイリで被ばくした子どもたちを保養のために受け入れているボランティアグループ。

毎年、夏には、同じようなトラブルが里親さんや近所のお子さんとの間を、かけめぐる。飛び込み、ライン無視の横泳ぎ、水かけあっこ、公共のプールで「もう入れてあげません!」と、なんど叱られたことか。でも、日本のお風呂は、きちんと入り方を教えてあげると、みんな大好き。

日本とロシア、この2つの民族性の違いは、本当におもしろい。仕事中毒と余暇充実派、小心と大胆、繊細と大ざっぱ、暗いと明るい、何事にも両極にあるかのような民族だけど、人としての心はもちろん同じ。家族を愛し守る。みんな豊かになりたいし、人生を楽しみたい。

こんなこともあった。けんかなどしてはいけないと教えぬかれた日本っ子。オモチャのとりあいで、頭ごつんとチェルノブイリの子にされて、すぐに言いつけに来た。「人をなぐっちゃいけないんだよね」。

私たちは日本の子どもたちから貴重な体験を奪ってはいないか。こんな簡単な問題も自分で解決できない。子どものケンカと、政治解決のためのガンジーの非暴力平和運動が、混同されて教育されていないだろうか。

ロシア人や外国人を浴場からしめだして、2つの民族は理解し合えない。外は放射能やダイオキシンだらけでも、自分の家の中だけきれいにして満足している日本民族になりかねない。

わが民族よ、大衆浴場は現存する日本の少ない伝統文化だ。誇りを持とう! ロシア人(ごく一部と思いますが)に、堂々と「ここはプールじゃねんだ」と一喝すべきかみなりおやじたちよ、絶滅してしまったのか。

さあ、小渕さん、ロシア首相といっしょにお風呂に入って、日本の風呂の入り方を教えてあげてくださいな。

チェルノブイリの子どもたち、わずか10歳の子がつぶやく「日本って、平和でいいね、心が落ちつくね」って。傷ついた環境から来た子どもたちは日本を天国のように感じている。

だから2つの民族は絶対近づける、わかり合える、愛し合えると信じている。

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