ウェブマガジン カムイミンタラ

2000年07月号/第99号  [ずいそう]    

掛軸の魅力
松山 真也 (まつやま しんや ・ (株)松山額縁店社長)

掛軸って、奥が深いのを知っていますか? 私はこの商売を始める前は、何一つ掛軸のことを知りませんでした。自宅に掛けてあっても、意識すらしていませんでした。皆さんのなかにも、私と同じような方がたくさんいるのではないかと思います。しかし、会社に入り、しかも担当者になったから大変。何から覚えて、どう扱い、どう売ったらよいか、皆目見当もつきませんでした。そんな私を真面目に、親切丁寧に教えてくれた方が、メーカーのなかにいました。ほんとうに助かりました。その方がいなければ、今の私は存在していないかもしれません。その彼から聞いたこととエピソードを交え、掛軸の魅力にふれたいと思います。

ちょうど掛軸の勉強をしていた、入社してまもないある日、翌日はお姉さんの結納をおこなう佳き日だという友人の家で、私は不謹慎にもその家の和室でわいわい麻雀をやっておりました。そこへお父さんが緊張した表情で入って来て、掛軸を取り替えました。いままで掛かっていたのは、破れて折れ傷のある一行書でした。それを水墨山水に掛け替えたのです。

私は教えてもらったばかりだったので、「結納の席に山水はだめですよ。水に流すと、よく言います。やはり、おめでたい席には高砂か松竹梅、鶴亀でしょう。それが無いのなら、いまのままの書のほうがいいですよ」と知らせましたが、そのお父さんは「こんな破れた書を掛けておくわけにはいかない。じゃあ、良いのを持ってきてくれ」とのことでした。

私が、高砂の良い掛軸を持っていくと、「やはり違うなあ。和室が明るくなったよ」ということで一件落着したのでしたが、数日後、そのお父さんがお菓子を持って、お礼に来られました。どうしたことかと聞いてみると、「やあ、先方(北陸の方だったみたいですが)が部屋に入るや否や、良い掛軸を掛けていますねと喜ばれ、こういう趣味のあるお宅のお嬢さんをいただくなら申し分ない、と言われたんだよ」とニコニコしておられました。私も勉強していてよかったなとつくづく思ったと同時に、ほんとうにこんなことが現実にあるのだということを認識させられました。いまでも、その時のお父さんの得意顔が思いだされてなりません。

外国の方で、自分用のプレゼントに掛軸を買っていかれる方がいます。彼らからすると、掛軸は巻物(スクロール)です。買われるものも山水とか花鳥もの(牡丹とか紅葉)ではなく、決まって「書」です。しかも、たくさん字の書いてある二行書・三行書が好みのようです。ただ、意味を説明してくれと言われると、英語のできない私はしどろもどろ。でも、世界中に日本の文化が持ち出され、楽しんでもらえるなんて、ひじょうにうれしいことです。

最近は、鑑定を主にしたテレビ番組が出てきたおかげで、私のところにも依頼が来ます。ほとんどが本物か贋物か、値は幾らくらいするのか、というものです。すべてに言えるのは、保存状態が悪いものが多いことです。興味、関心がなかったからというのが多いのではないでしょうか。いちど、押し入れなどに眠っている掛軸がないか探してみてはいかがでしょうか。

いま、建築様式が変わってきました。とくに北海道は、床の間を作らない家も出てきました。また、床の間があったとしても、壁が白いとか洋間から見えるので変だとか、いろいろ掛軸が掛けずらくなってきています。私どもも、こういう状況の中で、それにふさわしい現代風の掛軸もお世話させていただき、対応しています。

掛軸は、日本文化の一部です。地域によって風習や伝統も異なるかもしれませんが、季節感をかもしだし、雰囲気をつくってくれる道具です。もっと勉強し、皆さまにわかっていただける商品として販売し、継承していきたいと思っております。

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