ウェブマガジン カムイミンタラ

2000年09月号/第100号  [ずいそう]    

もてなしの島 沖縄
佐和田 安行 (さわだ やすゆき ・ 冒険王(株)代表)

「私は沖縄が好きだ」そう言い切る沖縄県民は多い。何が好きなの、どこが好きなのと聞かれたら「青い海と真っ青な空」との答え。しかし“うちな~んちゅ”(沖縄の人)は口下手が多いといわれ、表現はうまくできないが、いちばん感じていることは「暮らしやすく人間味のある島・沖縄」が好きということではないだろうか。原稿を書いているいま現在は、沖縄サミットの真っ最中である。会議に先立ち、各国首脳と地元の交流風景が映し出されている。そこには、これぞ沖縄というべき歓迎の様子が伝わっていた。特に子供たちの屈託のない笑顔は最高だ。天真爛漫に首脳に声をかけたり、質問したり、なかには抱擁されたり、そこには平和な至福のひとときがあった。

私は、この心踊る歓迎が沖縄を表わしていると思う。経済的には全国最下位だが、おもてなしにそんなことは関係ない。とにかくうれしいのだ。歓迎したいのだ。そういった純粋にお客さまを歓待する心がこの土地にはある。以前はもっと色濃く残っていたと思うが、急速に本土化していく現代では地元の風習、風土が薄れていく。“うちな~んちゅ”としては、いつまでも残って欲しいものだ。

この歓待の気持ちは地元の食堂にもよく現われている。たとえばソーキそば(豚のあばら肉をのせたそば)の場合、そばが見えないくらい豚肉、野菜、たまご焼きがのっかっていて、そばにたどり着くまでにお腹を満たす店もある。またテレビによく映し出される公設市場近辺では、客層の平均年齢が70歳くらいだが、650円の料理で若者でもあきれて笑いが出るほどのボリュームの店もある。当然、残す人が多いが、食堂の壁にはちゃんと持ち帰りができるように折箱が用意されている。こういうところにも、老若男女含めた沖縄の歓待したいという気持ちを感ずる。本土の友人は言った。「沖縄を楽しむには、まず地元に友達をつくること」。まさにそのとおり、きっと歓待してくれると思う。

このような素朴な島・沖縄だが、抱える課題も多い。日本の1%の面積に全体の75%の米軍基地が存在する沖縄。失業率が本土の約2倍の沖縄。地場産業が弱く観光経済と公共工事に依存が多い沖縄。たしかに歴史的にたいへん不幸な時期があった。非常に悲惨な地上戦や自国の軍隊による弾圧もあった。私は35歳、戦争を知らない世代である。生まれた時から基地があった。しかし、住居が基地の所在地ではないため、直接的な影響をあまり感じないできた。現在も失業率が約2倍といっても悲壮感もないし、ほんとうに切羽詰まって仕事を探している様子でもない。ある意味では、ほんとうに暮らしやすく平和な島なのだ。

ただ、この平和な暮らしやすい島にいつまでも甘えていてはいけない。自然が育んできた素晴しい環境。先人たちが苦労しながらも、生かし、伝え続けてきた風土や文化。みな過去からの贈り物だ。現在の沖縄はその遺産にぶらさがっている気がする。赤瓦の屋根も少なく、街には空き缶がころがり、予算と開発の名のもとに山を削り、海をだめにしている。これは全国的なことかもしれないが、沖縄の、いや地域の宝である豊かな環境を壊していくのは非常に残念である。

また、過去の歴史を見つめるのは当然のことだ。大切なことだ。しかし、だからといっていつまでも補助してくれと国に要求ばかりしていても未来はないのではないか。奇しくもサミット晩餐会で歌った安室奈美恵に象徴されるように、自分の実力で世界を切り開いていくことが必要ではないだろうか。沖縄の子供たちはほんとうに未来を見つめる澄んだ目をしている。その子たちが自由に伸びのびと成長できる沖縄にしたい。現実は、大人になるにつれ依存心が増え、自立できていない状況が多い。本物の豊かさをつくるためにも“うちな~んちゅ”一人ひとりが“自立”する決意をしなければいけない時期と考えている。

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