ウェブマガジン カムイミンタラ

2005年11月号/ウェブマガジン第6号 (通巻126号)  [特集]    

道警不正問題を徹底解明し、信頼回復を求める道民の会
草の根の声を知事と道議会に

  北海道警察の裏金問題では、国や道に10億円近い金額が返還され、職員約3千人が処分されました。しかし多くの道民は納得していません。弁護士の市川守弘さん(51)らは「道民の会」を結成、各地で集会を重ね、北海道議会での百条委員会設置を求める署名活動を開始しています。民主、共産、社民が同じ運動を展開するという過去に例のない形が作られ、このほど開かれた札幌での集会でも3党の国会議員が勢揃いしました。ただし裏金問題は根深く、徹底究明がなければ同じことが繰り返えされることもこの集会で指摘されたのです。
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無手勝流で

イメージ(札幌大通公園での署名活動。「30秒の時間をください」と市川さん。)
札幌大通公園での署名活動。「30秒の時間をください」と市川さん。

10月22日土曜日の午後、札幌大通公園に「道警不正問題を徹底解明し、信頼回復を求める道民の会(道民の会)」代表委員をつとめる市川守弘弁護士の姿がありました。マイクを握り、道行く人に「30秒の時間をください。署名にご協力ください」と語りかけます。その後ろには民主党の宣伝カー。かたわらには衆議院議員、鉢呂吉雄さんらが立ち、交互にマイクを握りました。

10月28日金曜日の昼、札幌のパルコ前に市川さんの姿がありました。背後の宣伝カーは日本共産党。マイクをともに握ったのは大橋晃さん、花岡ユリ子さんの共産党北海道議会議員たちでした。

市川さんの街頭署名活動はこれにとどまりません。政党や労働組合が街頭署名をやるといえば、できる限り参加します。また自分の法律事務所がある大通西11丁目駅付近では、時間ができしだい昼休みを利用した署名活動を行ってきました。まさに底辺の活動です。

市川さんは道警裏金問題の前には道庁の裏金問題に取り組んだ経験があります。道警問題では、道民の会を結成し、衝撃的な証言を行った原田宏二さん(元釧路方面本部長)や斎藤邦雄さん(元弟子屈署次長)をサポートするなど、追及の中心人物になっています。その結果マスコミでの露出度も際だっています。

イメージ(昼休みを利用した街頭署名など、市川さんは草の根の活動を積み重ねてきました。)
昼休みを利用した街頭署名など、市川さんは草の根の活動を積み重ねてきました。

何が市川さんを駆り立てるのでしょうか。本人は突出して活動しているという意識はないようです。将来、何らかの選挙に出る気なのではという憶測については、完全否定しています。
「20年近く前に北海道に来てやりたいと思ったテーマは自然、農業、それにアイヌでした。ほんとうは私だけでなくあちこちで(裏金などの)問題をやってくれればいいのですが」

ふつうに考えてふつうに行動していたら、いつの間にか先頭に立っていた、という感じのようです。そして真相解明のために仲間の立場は問いません。
「あらゆる団体、あらゆる政党、あらゆる人たち、自民党、公明党の支持者でもいいんです。大歓迎なんです」

こうした市川さんについてジャーナリストの大谷昭宏さんは「無手勝流」と表現します。何の制約にもとらわれずに自由に行動しているということでしょう。ともすれば思想信条や所属、地縁血縁といったしがらみが行動の前に自己規制してしまうことは多くの人が経験しています。ましてや警察という強大な権力組織が相手です。無手勝流の市川さんだからこそ既成政党、団体の枠を超えた運動にと広がりをみせ、賛同者が広がっているのです。
「今回の総選挙でがらっと入れ替わったでしょ。あの世論が良いか悪いかは別にして、少なくとも世論によって国会が変わった。署名で民意をはっきりさせ、道議会と知事を動かしましょう」

道内各地で集会

道民の会は2005年2月28日に発足しました。それに先立ち1月には北見市で「道警裏金問題を検証するシンポジウム」が開かれ、鉢呂衆議などが参加しています。発足後の3月6日には函館市で元弟子屈署次長の斎藤さんらが参加してのシンポジウム、同月18日の札幌市の集会には原田さん、斎藤さんのほか愛媛県や群馬県の現職や元警察官が参加、疑惑の徹底解明を求めました。

5月19日には静内町で、21日には札幌市で障がい者の団体であるDPI北海道ブロック会議と共催でシンポ、その後6月中旬まで釧路市、帯広市、苫小牧市、仁木町、岩見沢市、江差町、留萌市、旭川市、稚内市と集会を重ねてきました。

道議会での百条委員会設置の動きは2003年11月に発覚した旭川中央署での不正を受けて12月に共産党が決議案を提出したのが始まりです。2004年3月には民主党が加わり共産党と共同で決議案が提出され、否決されます。そしてその後は道議会の開催ごとに提出されたものの、自民党、公明党などの反対によってそのつど否決され、2005年7月には会派のフロンティアが賛成に回ったものの、自民、公明の反対で否決されました。その否決回数はじつに7回にも達したのです。

イメージ(札幌パルコ前での街頭署名)
札幌パルコ前での街頭署名

ここで道民の会は新たな運動を開始します。それが署名活動でした。知事には適正な予算監督権の行使を求め、道議会には百条委員会の設置を求めるものでした。連合、民主党、共産党が組織的に取り組み、そのほか道民の会のホームページでも直接署名ができ、また署名用紙が印刷できるようにネっています。この署名には法的効力を持たせていません。未成年者でも署名可能で、より広い範囲の声を知事や議会に届けようというものでした。

発端は「ザ・スクープ」

道警の裏金疑惑が明らかになったのは2003年11月23日に放送されたテレビ朝日の「ザ・スクープ」です。旭川中央署の内部資料で明らかにした文字通りのスクープでした。ある署員から告発があり、同封されていた捜査費出納帳などから領収書の偽造などの生々しい裏金づくりが暴露されたのです。

イメージ(江別市での街頭署名)
江別市での街頭署名

その放送を受けて道内のマスコミ各社は一斉に報道を開始しますが、とりわけ熱心だったのが北海道新聞(道新)でした。領収書に名があった捜査協力者1人1人をたずね歩き、確認できたすべての人がカネをもらっていませんでした。そもそも受領したとされる当時、すでに他界していた人もいたのです。こうした例は北海道に限らず全国各地で見られ、告発も続出していました。

道警では国から捜査費、道から報償費という名目の経費をもらい受け、犯罪捜査の協力者への謝礼などに当てることになっています。ところが現職の警官はそうしたカネをほとんどもらえず、逆に領収書を偽造させられていたのです。また架空の旅費など、もっと金額の大きなカネの不正も証言されていきます。

原田さんの証言

「ザ・スクープ」から3ヶ月も経っていない2004年2月10日。元釧路方面本部長の原田宏二さんが衝撃の記者会見を開き、自らの告白文を配布します。裏金は国からの旅費、捜査費、道からの報償費、旅費などでつくられ、署長の交際費や異動のさいの餞別、内部での懇親会などに使われており、原田さんが署長時代は月5万円程度、道警本部防犯部長や釧路方面本部長時代は7~8万円だったというのです。そしてこの裏金づくりは原田さんが新人警察官として署に配属されたときから行われていました。

警視長という警察では警視総監、警視監に次ぐ階級だった人物が全面的に告白したのですから、その衝撃ははかり知れません。翌日から原田さん個人に対してさまざまな攻撃そして激励が始まります。自身の著書「警察内部告発者」によれば、電話で怒鳴られ、ののしりの封書やハガキが毎日のように届きます。その大部分は匿名で、警察関係者のようでした。その一方で激励の手紙もたくさん届きます。道警現職やOBから見知らぬ人まで、すべて実名での励ましでした。

「振り返ると、若い男が私を小走りに追ってきた。見覚えのない顔だったが、私を『本部長』と呼ぶのだから、おそらく現職の警察官だろう。はたして、彼は名前と現在の所属を名乗ってから、こう言った。『本部長のおかげで現場におカネが少し回るようになりました。携帯電話もまだ台数はわずかですが配分されました。ありがとうございました。どうしてもお礼が言いたかったものですから』『そうかよかったな、みなに迷惑をかけたな、現場がよくなれば俺もうれしいよ』そう私は答えた」(「警察内部告発者」より)

稲葉事件

原田さんに告白を決意させた大きな動機になったのが1年半ほど前に起こった「稲葉事件」です。拳銃摘発のエースだった稲葉圭昭警部が覚せい剤取締法違反で逮捕され、のちに有罪が確定、服役します。ところがその裏にはなりふり構わない拳銃摘発とスパイを使っての工作、違法捜査があり、その資金源に覚せい剤が使われました。警察組織そのものによる工作活動でしたが、1人のスパイの反逆によって明るみに出たため、稲葉警部1人に責任がなすりつけられたとされています。この事件では稲葉警部の元上司が自殺する事態にまでなりましたが、道警は一部の責任をとったのみでした。

イメージ(「警察内部告発者」(原田宏二著))
「警察内部告発者」(原田宏二著)

「彼はまだ、事件の『真相』をすべて話してはいない。とくに石狩新港での泳がせ捜査については、薬物密輸の経緯、どのようにして捜査が失敗し、どう極秘裏に処理されるにいたったかの経緯などの詳細は、すべて稲葉の胸の内にしまわれたままだ。その意味で、いま、稲葉は道警にとって、一種の『時限爆弾』のような存在となりつつある。あまりにも強引すぎる事件の幕引きを図った道警は、いま無謀すぎたそのツケを払う立場に立たされている。稲葉事件の幕は、まだ、下りきってはいないのだ」(「警察内部告発者」より)

原田さんはこの事件での道警の対応にショックを受けました。稲葉警部が結婚の仲人を頼まれたこともある元部下の1人であったという事情もさることながら、警察上層部の無責任さに衝撃を受けたのです。著書には次のようにつづられています。「稲葉事件は警察組織の抱えるさまざまな歪みが、そこに凝縮されており、また監督責任を問われるべき上層部の処分が、ほとんどないも同然で終わった点など、警察ぐるみで税金=公金を横領する『裏金作り』という犯罪と、きわめて似通った構造を持っているからだ。だからこそ私は、この事件の真実を隠蔽した道警上層部の卑劣さ、姑息さに、目もくらむような絶望と怒りを覚えるのである」

告白続く

原田さんの記者会見から半月後の2月26日、北海道新聞朝刊の社会面に「弟子屈署で裏帳簿」というスクープが大きく掲載されました。96年から2000年までの署内の裏帳簿を入手したというもので、入手先などは伏せられていました。この記事は「追及・北海道警察『裏金』疑惑」(北海道新聞取材班)によると、情報提供者に了解を得ない見切り発車。弟子屈署は署員30人程度で情報の出所はすぐに分かってしまう。自分だけでなく周囲にも大きな影響を与えるため、本人は警察署名だけは伏せておきたかったが、道新はそれでは記事に力が失われるため、本人に通告して見切り発車したのでした。数日後、その本人は腹を決め、表舞台に出ることになります。

3月1日元弟子屈署員の斎藤邦雄さんが記者会見に臨み、合わせて市川守弘弁護士と連名で住民監査請求の訴えを起こしました。4日には原田さんが道議会総務委員会に参考人招致され、その模様はNHKによって道内に生放送されました。そして22日には道内の弁護士64人が百条委員会設置の要望を行い、24日には民主党、共産党が同委員会設置を共同提案、しかし否決されます。

その後道監査委員会が監査を実施、結果的に道警は裏金を認め、職員ら約3千人を処分、2004年末から2005年2月にかけて利子を含めて国と道に9億円以上の返還を行います。その間、興部警察署署長の自殺という痛ましい出来事もありました。

監督する知事と道議会に対して

(06)

2005年10月29日土曜日午後、署名運動のさなかの札幌で「百条委員会」の設置を求める道民集会が開かれました。会場となった京王プラザホテルには250人の老若男女が詰めかけ、市川さん、原田さん、そして3政党を代表する国会議員の発言に、熱心に耳を傾けました。

はじめに登壇した市川さんは真相究明には2つの方向性があると説明します。1つは道警そのもの追及です。
「道の監査委員は一生懸命道警を特別監査し、その結果、あいまいだけれども不正はあったということを認めました。原田さんや斎藤さんによって裏金が明らかになりました。しかし大きな力を持っている警察ですから、追及は大きな壁に突き当たっています」

イメージ(市川さん)
市川さん

そこでもう1つの方向として挙げるのが警察を管理監督すべき議会や知事に対する働きかけなのです。
「私たちは百条委員会の設置をずっと求めてきましたが、自民党、公明党が一貫して反対し、否決されてきました。次も否決される前に道民の声をはっきりと道議会にぶつけようと署名活動に取り組んでいます。それに知事は道の監督する権限と義務を持っています。宮城県の浅野(史郎)知事は予算監督権の行使として報償費の執行を停止しました。高橋(はるみ)知事は監査委員に丸投げしただけです」

裏金だけでなく返還金も闇の中

イメージ(原田さん)
原田さん

原田さんは最近深まっている宮城県の浅野知事との交流の模様をユーモアを交えて披露したあと、道警の裏金問題での自分の考えを表明しました。道警の説明や返還額の疑問はもちろんのこと、返還の方法にも疑問があるといいます。
「9億6千万円を返還しましたね。返すと言い始めて2ヶ月くらいで返してしまった。道庁は23億円を返すのに10年かかりました。一応は現職とOBが出したということになっています。鉢呂議員が共済組合のことを指摘していましたが、いろんな憶測が飛び交っているんです。どこからどれくらいのカネを集めたのか、全然公表していませんから。裏金も闇の中だが、返還金も闇の中なんです」

イメージ(集会には3党がそろいました。)
集会には3党がそろいました。

そしていま百条委員会が設置されて道警が困るのは、不正はなかったとする管理部門にメスが入ることだと指摘します。
「内部調査で問題がなかったとして隠していた部署がある。そこは道警の頭脳といえる管理部門なんです。人事を担当している警務、カネを扱っている会計では一切不正はなかったというのが内部調査の結果です。たとえば会計課長が百条委員会に呼ばれてガンガン追及され、万が一道警全体のカラクリがおおやけになったとき、ものすごいスキャンダルになると私は思っています。そこが崩れたときには全国にほころびが生じる。全国の裏金問題の最前線にあるのが道議会なんです」

刑事告発に踏み切る

鉢呂議員は先日、倶知安署で使い込みがあるという情報を得て、内閣委員会の質問通告にこの件を入れました。翌日、その質問の日に、ニュースで倶知安署の不祥事が流されます。
「4月から捜査に入っていたにもかかわらず、私が質問をすることが分かって初めて明らかにする。警察の隠しだてをする体質は変わっていない」

イメージ(鉢呂さん)
鉢呂さん

北見方面本部が会計検査院から領収書が架空ではないかと指摘されました。その店は5年前に閉店していたのです。ところが警備課長はその領収書を本物に仕立てるため、経営者の名刺、店の名を載せた観光マップ、そして従業員募集の広告が載った地元求人紙というニセもの3点を偽造したのです。鉢呂議員は同僚議員とともにその課長を含めた道警幹部を業務上横領で刑事告発しました。
「司法の場できちんと解明されなければなりませんが、もう1つはやはり政治の場です。百条委員会はどうしても設置していただきたい」

鉢呂さんが百条委員会にこだわるのは現状では国会での追及に限界があるからです。いくら追及しても明確な証拠がない限り、逃げられてしまいます。道議会に百条委員会が設置され、ウソをいえば偽証罪に問われるのです。
「鉢呂もやりすぎだ、危ないぞと。選挙(違反)で民主党がやられるのは鉢呂のせいだという人もおります。どんな人でも法律に違反することを指摘されれば、それはあるかもしれません。警察はそれをやりかねない。しかしだからといってこの問題にふたをすることは政治家にとって許されることではありません」

同じ党の中でも警察裏金問題の取り組み方に温度差があることを鉢呂さんは否定しません。しかしその追及への執念は並大抵ではなく、民主党を引っ張っているようです。

20年前から変わらず

イメージ(吉井さん)
吉井さん

大阪が選挙区の衆議院議員、吉井英勝さん(日本共産党)は、20年前に大阪で発覚した事件を紹介しました。
「20年前に大阪府警本部をめぐる大きな疑惑問題がありました。たとえば大阪南署の署長がクラブなどで毎日のように飲み歩き、キープしたボトルに『南町奉行』と書いていた。そのカネがどこから出ていたかといえば、きょうのお話のような仕掛けなんです。そして警察大学校の校長になっていた元本部長が自殺しました。それから20年経っているんですが、全然変わっていないんです」

そして現職警官として初めて裏金問題を告発した愛媛県警の仙波敏郎さんの話に及びました。仙波巡査部長は裏金のニセ領収書作成を一貫して拒否してきたため、試験で良い成績をとっても昇任できないのです。
「警察官に弱みをつくらせ、幹部はその弱みを握ることで自ら告白できない仕組みを作ってきた。これは単なる体質ではなく、システムとして作り上げられてきたんです」

イメージ(近藤さん)
近藤さん

新潟県の参議院議員、近藤正道さん(社民党)は、9年間も拉致監禁された女の子が救出されたとき、新潟県の県警本部長が内輪の接待で賭けマージャンをしており、しかも警察が救出したというウソの発表をした記憶に新しい事件を紹介しました。
「新潟県でもこの2、3年、監査委員が資料を要求したり、捜査員(警官)との面会を申し入れましたが警察は応じません。法的根拠がないにも関わらず拒否する。治外法権的なことがこの国にあっていいのだろうか。このことを大きな問題にしていかなくてはならないと思います」

こうした発言を聞いていると、原田さんたちが自分の過去をさらけ出しても告発に踏み切った気持ちがだんだん分かってくる気がします。どう考えても不正常そのものです。そしてこの不正常が続く限り、国や道の予算は正しく執行されません。そして現場の警察官は裏金作りの片棒を担がされ、身動きのとれない状態に追い込まれるのです。

市川さんは現在の状況を「裏金問題は佳境に入ってきた。いよいよメインステージです」といいます。裏金問題は警察だけでなくほかの官庁でも次々に発覚しています。これらも道警裏金問題の追及の波紋と言えなくはないでしょう。それだけに、次のステージとして道議会での百条委員会の設置には大きな期待がかかるのです。

追及のベストメンバーそろった

ジャーナリスト 大谷昭宏さん

イメージ(大谷さん)
大谷さん

10億円近くを現職なりOBが負担する。日本の警察の伏魔殿の一角がくずれたわけで、これだけの巨額のお金を返済せざるを得なくなったことは警察にとっては恥辱中の恥辱です。

端的に言えば横領ならびに詐欺であるわけです。警察が、私たちは詐欺犯でした、私たちは横領犯でしたのでお返しすることにしましたということで、これほどみっともない警察は日本どころか、世界中を探したってそうそうない。だからこそ最後の最後まで抵抗を続けたのです。

警察庁としては道警だけの問題に押しつけたかったんでしょうが、そうはいかなくなってきた。全国のあらゆるところで出てきている。これ以上燎原の火を広げたら大変なことになると必死の防戦につとめているのが現状だと思います。

釧路方面本部長だった原田さんとか弟子屈署の斎藤さんとか、勇気ある、正義感を持った警察官がいたということは一連の不祥事の中にあって大きな光だった。原田さんとは何度かお会いしていますけれども、人柄を含めて敬服しています。むしろ幕引きに走っている人たちはこのお二人の姿を見て、おのが人生を恥ずかしいとは思わないのかと申し上げたい。

それを支えてこられた市川さんも無手勝流みたいなかたで、ベストスタッフがそろったという感じがします。

それに北海道新聞というメディアがなければとてもここまで行かなかった。すばらしい記者たちがいた。その勇気も高く評価をしたい。道新は昨年、新聞協会賞、日本ジャーナリスト会議賞、菊池寛賞というメディアのいわゆる大賞と呼ばれるものを総なめにしました。この数10年でトリプル受賞というのはありません。ひるがえっていえば朝日、毎日、読売といった大手はなにをしていたんだろうか。逆に権力の幕引き、権力の隠蔽工作に手を貸したのではないか。道新ひとりが孤軍奮闘した。全国紙の記者は猛省すべきだと思います。

若干気にかかるんですが、あれだけ大キャンペーンを張った道新の中心記者がいずれも東京に転勤になった。それぞれご栄転なんですけれども、悪くとれば、道新としても幕引きしたいのではないかと。ですからこれからも手を緩めることなくやっていただきたいと思います。


[資料] 2006年12月10日掲載 /2008年4月3日更新

(1) 仙波敏郎さんを支える会 連載ドキュメント仙波敏郎第29回 (2006年10月4日) (転載HTML)
(2) 原田宏二氏 愛媛県警国賠訴訟陳述書 (2006年8月11日)  (PDF 312KB)
(3) 齋藤邦雄氏 愛媛県警国賠訴訟陳述書 (2006年8月11日)  (PDF 408KB)


[関連図書] (価格はすべて税別)

(15)

北海道警察の冷たい夏 曽我部司 著
                 2003年9月10日   寿郎社 1,900円
  同 文庫版       2005年2月15日   講談社 733円

稲葉事件の真相を追求したルポルタージュ。拳銃取締のエースだった稲葉圭昭警部が突然逮捕され、元上司が自殺をとげます。アジトに張り込むなど曽我部さんのねばり強い取材によって事件の裏に隠された道警の組織ぐるみの不正が暴かれ、元釧路方面本部長の原田宏二さんが世に訴え出る動機にもなります。

(17)

警察幹部を逮捕せよ! 大谷昭宏 宮崎学 高田昌幸 佐藤一 著
               2004年6月30日  旬報社 1,500円

警察問題に詳しいジャーナリストと道新記者たちによる座談会。北海道をはじめ、各地で明らかになる警察の不正を受けて緊急出版されました。イベントの警備費用や工事代金の水増しなどあらゆる手口を使って裏金をつくり、どう使ってきたかなどの情報を出し合い、一部マスコミの幕引きを許さず徹底追及することを表明します。

(13)

追求・北海道警「裏金」疑惑 北海道新聞取材班 著
               2004年8月15日   講談社文庫 876円

2003年11月のテレビ朝日「ザ・スクープ」の旭川中央署裏金報道に端を発し、元釧路方面本部長、原田宏二さん、元弟子屈署次長の斎藤邦雄さんの告白と訴え、道議会、国会、住民監査請求などと続く道警問題の詳細なレポート。原田証言のインパクトは大きく、道内だけでなく全国に波及していく経過と新聞社の動きが細かく描かれています。

警察内部告発者   原田宏二 著
               2005年3月10日  講談社 1,700円

自らの不正を告白し、警察組織の再生を訴える元釧路方面本部長が38年にわたる警察官生活と記者会見までの苦悩、その後を書きつづりました。中傷や脅しの電話、手紙など、バッシングに耐えれたのは、市民や現場警察官から激励でした。

(16)

日本警察と裏金  北海道新聞取材班 編
               2005年4月15日  講談社文庫 629円

「追求・北海道警『裏金』疑惑」の続編と、同じく不正問題を追及している高知新聞、愛媛新聞、神戸新聞からのレポート。地元警察と親密な関係を築いてきた地方新聞社が警察組織にまっこうから対峙し、嫌がらせや妨害を受けながらもジャーナリズムの原点に立ち返って報道していく姿がつづられています。


[参考HP]

仙波敏郎さんを支える会通信
 http://ww7.enjoy.ne.jp/~j.depp.seven/

明るい警察を実現する全国ネットワーク
 http://www.ombudsman.jp/fswiki/wiki.cgi/akarui

北海道新聞「道警裏金問題」
 http://www5.hokkaido-np.co.jp/syakai/housyouhi/document/

関連リンク道警不正問題を徹底解明し、信頼回復を求める道民の会  http://www.douminno-kai.net/

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