室蘭市に「産業歴史ロード」を、という考えに近ごろ憑(つ)かれている。
室蘭市は港をぐるりと囲む馬蹄状に町がひらけている。だが、港に面する埠頭の多くは、経済の構造転換とやらのおかげで荒涼たるコンクリート砂漠となってしまった。ここを使おうというわけである。
まず、本輪西駅あたりから絵柄(えとも)半島の突端まで海沿いにSLを走らせる。私の計測では全長12.3キロメートル。随所で途中下車すると、そこに産業ごとの村がある。工作機械、造船、鉄鋼、セメント、石油などはすでに室蘭に見せるものがたくさんある。たとえば、高炉は中まで見せる。産業革命期ごろの古いものから最新鋭のものまで、変化がわかるように展示する。織機や旋盤、鋳物、ガラスなどは実演つき、時にはお客も操作することができる。石油は色合いや粘度がまるで違う世界各地の原油から始まって、それが透明なガソリンや灯油に変わっていく過程を見せる。
あとは産業博覧会風にいくらでもイメージをひろげることができよう。クルマの組み立て工程などは、ぜひ、はじめから取り入れたい。そして、ともかくスタートしたうえで、毎年、常に新しいものを加えて充実をはかっていく。イベントを随時とり入れ、家族づれやヤングが集まるように工夫する。
産業観光といえば世界に科学博物館や日本にも古い産業町などがあるが、私が言っているようなものはあまりなく、十分にユニークだろうと思われる。とくに北海道・東北では、小学生から大学生まで含めて、工業の実際の姿を見る機会は極端に少ない。私が学生を連れて工場見学をしてきた経験からいっても、潜在的需要はかなり大きい。室蘭市当局がいま考えているような、観光(地球岬や測量山や水族館)より何層倍か人を集めることができるのではないか。この産業観光に、風光や港や温泉を結びつけることだってできるではないか。
と、このように私が室蘭市民に説くと、反対する人はまずいないが、どうもまともに受けとってもくれていないらしいのである。私としては、札幌での「世界一の雪ダルマを作ろう」という運動より、よほど意義があると思っているのであるが。