ウェブマガジン カムイミンタラ

1988年11月号/第29号  [ずいそう]    

生きていること
長田 俊子 (おさだ としこ ・ ユニセフ募金北海道事務局代表)

朝、目が覚める。「ああ、けさも生きている」「ありがとう」、ベッドの中でまず感謝。こんな日々をこの2、3年続けている。女も盛りを終えて、人並みに、いや人並み以上に厳しい更年期の体の不調に見舞われた。人びとは、暇な暮らしをしているとそれは強いとか、仕事や打ち込むものを持っていると軽いと言う。

しかし、それはやはり個人差があることを知った。なぜなら、私にはその時期「アジアやアフリカの飢餓の子らを救援したい」というユニセフの仕事があった。

このユニセフとの出合いは、私が求めていたもの、健康なうちは一生続けられるものとして私の中に大きな力をあたえてくれるものであった。

そんな折、ネパールのユニセフ活動のスタディーツアーの参加があった。

この国のさまざまなユニセフ活動を学習して、私の中の信念はさらに深いものとなった。命のあることが今は素晴らしくうれしいことになった。

日本人の寿命の延長は幸せなことだと思う。しかし「健康で老いるのでなければ」といつも思う。

そして、ただ生きているだけで私は幸せとは思わない。57年間生きてきた私は、数えきれないほどのさまざまな人のお世話になった。なにせ、この世に生きるための1滴の水さえも、自分の手では求められないのだから…。

そう思うと、少しでも社会にお返しできる自分の力があったとしたら、惜しまずに働こう。見返りを求めたりせずに、今までのお返しができたらと思っている。1回きりの命なら、輝かせて生きよう。だから朝の目覚めは、きょうも1日「地球上のすべての子どもたちに笑顔を」と願って働く。人びとは豊かさの中で隣人への愛を忘れがちになるものらしい。それが悲しいけれど…。

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