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1989年05月号/第32号  [ずいそう]    

バラとネーミング
新谷 光二 (あたらしや こうじ ・ 日本ばら会北海道支部事務局長)

世は、今や、花と緑の世紀といわれます。大阪の国際博覧会では、花と緑の大合唱が起ころうとしています。札幌でも、先年行われました花と緑の博覧会は大好評でした。あわせて、食の博覧会の体たらくを考えますと、間違いなく「ダンゴよりハナ」の時代なのです。

さて、花卉園芸品種には実に多数のものがありますが、僕は、一にも二にも、バラを推します、それは色、形、香りの三拍子がそろった品種は他に無いと思うからです。

フランスのバラ作出家メイヤンは、多くの作出家が自信作にはそうするように、夫人の名を採って「マダムアントワーヌ・メイヤン」を発表しました。1942年のことでした。これが、後にサンフランシスコの太平洋戦争講和会議場に配られ、文字どおり「ピース」の名で世に知られることになった銘花なのです。この花が交配親として使われ、多くの現代バラ、いわゆるピース・ファミリーが生まれました。

日本作出花の黎明を告げる「あけぼの」は川合真一(川合玉堂画伯の令息)の作出で、「ピース」に似た色調を持ちますが、「ピース」がいかにもバターくさいのに、「あけぼの」は消楚で、和風の審美眼に耐え得る花で、僕の大好きな花です。「あけぼの」は海外でも好評を博し、フィリピンでは大統領夫人の名を付して広く植栽されているとの情報を得て、僕も喜んでいましたが、それが、後に悪名高い「イメルダ」であったのにはがっかりさせられました。

同じ日本作出花の「のぞみ」は畏友小野寺透工学博士の作出ですが、この名は夭折した令嬢の名から採られ、ミニチュア種ながら良く繁り、花付きがよいのでグランド・カバーにはもってこいの品種です。直径2センチほどの5弁のシルバー・ピンクの花が一面に咲き、それは見事なのです。この品種は、それまで無かった性質のものでしたので、高く評価されまして、1970年、英国ナショナル・ローズ・ソサエティの新花作出コンクールに入賞しています。

日本の作出技術も国際水準に達しているのです。

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